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十月の末、とある女子校の教室で。

受験が近付く少女の、現実逃避な語らい。

「生まれ変わったらなんの動物になりたい？」

「…イルカ」

「へー、なんで？」

「いつだって半分づつ寝てられるから」

「でもイルカになったら、弱肉強食の海で怯えて生きるか、水族館でひたすら飛び続けるかのどちらかじゃね？」

「そっか、それはヤだな…じゃあ、お金持ちに飼われたい」

「お金持ちに買われたら、不老不死の薬として食べられる」

「それってジュゴンじゃん！」

三年生の秋。少女はいつだって、ひたすら眠いのだった。

イルカは「半球睡眠」といわれる、特殊な方法で休息をとるそうです。脳の左右を半分づつ休ませることで、呼吸のため水面に浮上するイルカが24時間体制で活動できるのだとか。

ユッコこと岡田有希子さんが高校三年生だった1985年秋、十月の人魚は眠れない夜が続いていたのでしょうか…。

photo by yukikostarlight

# 562 イルカになりたい少女