拙著『執筆開始、その前に ―「悪文」を避けるための考え方―』が、10月に刊行されます。

新評論 334ページ 2,640円

 

 

文章の書き方に関する本は世に溢れています。書店に足を運べば、一目瞭然でしょう。該当の棚を眺めると、目的やレベルに応じたさまざまな本が刊行されていることがわかります。もちろん中身は玉石混交ですが、それらに書かれた技術を的確に身に付ければ、下手でわかりにくい文章、すなわち「悪文」を避けることができるようになるかもしれません。

 

一方、日々ニュースに接していると、文章にまつわる不祥事が相次いでいることがわかります。論文の捏造、記事の盗用、捜査書類の改ざん、コピペの氾濫、SNSへの書き込みの炎上……。こうした出来事が大きな問題として報じられることも珍しくありません。これらは社会に害をもたらすという文脈で「悪文」と呼んでもいいでしょう。そうした広い意味での「悪文」は、文章の上手、下手とは関係ありません。むしろ、うまい文章を書ける人ほど、その当事者になる可能性が高いといえます。先に挙げたような本で作文技術を身に着けても、「悪文」を書くようでは本末転倒です。

 

右記のような「悪文」を避けるための考え方を体系的にまとめたのが本書です。心理学、認知科学など幅広い分野の知見を援用しながら、書く目的を見定めること、書くための材料を見極めること、読み手を見据えることの3点を柱に、執筆前に頭に入れておきたい心構えや思考法を提示しています。

 

本書は基本的に、書くことに自信のない人を念頭に作成しています。ただ、本書を読んだからといって、うまい文章が書けるようになるわけではありません。それでも、本書を通じて、書く場面に限らず、物事の見方、考え方をブラッシュアップするヒントを数多く手にすることができるでしょう。その意味では、書くことに自信のある人も、多くの気づきを得られるかもしれません。すでに何度も執筆を開始した、という人にも是非手に取っていただきたいと思います。