自分は、幼い頃から両親が共働きで、保育園に入る前しばらくの間、母方の実家で祖父と祖母に面倒を見てもらっていた時期がある。


 祖父は少し気難しく寡黙だったものの滅多に怒る事は無く、そして祖母も、やはり口数は多くは無かったものの、それこそ全く威圧感などは感じず、自分には歳の離れた友達のような印象だったと思う。


 実際今思い返しても、怒られた記憶も確かにあるものの、今現在嫌な思い出だったという印象は全くない。

 毎日夕方に母親が迎えに来るまで、遊びのネタが無くて困っていた事は憶えているものの、こと人間関係においては、他の全てと比べても、最も良い感情を持てていたのは間違いない。


 それはおそらく、祖父、祖母共に、当時一生懸命に遊んでいた自分というものを容認してくれたからだと思う。


 午前中は家の中で人形劇のような子供向けの番組を楽しんで観る。

 昼食後は、ある時は近くの広場でボケーッとしている。

 またある時は、家の廊下を走り回って祖父に「うるさいから走るな」と怒られる。


 ……改めて思い返し言葉にしてみると、物凄くつまらなく、無為な時間を3、4年余りずっと過ごして来た気がしてくる。

 でも3、4歳の子供に、そもそも有意義な時間の使い方というものがあるのかどうかも分からないし、それに実際、そうやって一人遊びばかりやっていたのにも関わらず、低学年の時分には勉強が全く苦ではなかった記憶もあるから、あながち無駄ではなかったのかもしれない。



 そして自分は当時からすでにテレビというものに親しんでいた訳で、それこそそっち関連の中継の様子も、数回目にした事がある。

 その映像の中では、大人がそれ関連の事をそれを知らない子供達に教える、と言う事が何の疑問も無く行われていて、だから自分も当時、それ関連の事を経験した事がある筈の祖父と祖母に直接尋ねてみた記憶がある。


 「どうして、駄目だと分かっている事を止める事が出来なかったの?」と。


 2人共、何も答えてはくれず、困ったような表情を浮かべていただけだった。

 

 あれから20年以上経ち、学校でのいじめや、そして会社等の社会を経験した自分。


 そうして今改めて考えてみると、当時、子供とはいえ2人に対する気遣いの無い言葉を口にしてしまった自分を思い、少し嫌な気分になる。

 だけどそれ以上に、当時、そのような立派な大人の対応をしてくれた祖父と祖母に対し、心から尊敬し、自慢したいと思える自分もここに居る。


 実際子供の時は、『テレビとかだと教えるのが普通だって言ってるのに、ケチ』のような事を考えていて……。



 2人の孫になれて本当に良かった。

 今は、心からそう思っています。