「リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界」元モデルが従軍写真家になり人生をかけて戦争を撮った自伝映画。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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「リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界」

 

を観ました。Fan’s Voiceさんの独占最速オンライン試写会が当たり観せていただきました。(@fansvoicejp)

 

ストーリーは、

1938年、南フランスでアーティスト仲間たちと休暇を過ごしていた。リー・ミラーは、芸術家ローランド・ペンローズと出会い恋に落ちる。ほどなくして第2次世界大戦が始まり、1945年、リーは従軍記者兼写真家として活動する。ヒトラーが自死した当日、ヒトラーの浴室で自らのポートレイトを撮影するが、それらの光景はリー自身の心に深く焼きつき、長きにわたり彼女を苦しめることになる。

というお話です。

 

 

1938年フランス、リー・ミラーは、芸術家や詩人の親友たちソランジュ・ダヤンやヌーシュ・エリュアールらと休暇を過ごしていた。そこへ合流した芸術家でアートディーラーのローランド・ペンローズと出会い、瞬く間に恋に落ちる。

 

ほどなくフランスに第二次世界大戦の脅威が迫り、一夜にして日常生活のすべてが一変する。「ヴォーグ」で写真家としての仕事を得たリーは、アメリカ「LIFE」誌のフォトジャーナリスト兼編集者のデイヴィッド・シャーマンと出会い、チームを組む。

 

 

1945年フランスで従軍記者のパスが貰えなかったため、アメリカの従軍記者兼写真家としてブーヘンヴァルト強制収容所やダッハウ強制収容所などに赴き、次々とスクープ写真を撮影していく。ヒトラーが自死した日、ミュンヘンにあるヒトラーのアパートの浴室に入り自らのポートレートを撮影し、戦争の終わりを伝える。

 

だが、戦争での悲惨な光景は、リー自身の心にも深く焼きつき、戦後も長きに渡り彼女を苦しめることとなる。戦後、ローランドと結婚し子供も設けるが、心の傷は癒されることは無かった。後は、映画を観てくださいね。


 

リー・ミラーの自伝映画ですが、若い頃の奔放な彼女の部分は描かず、マン・レイと別れた後、自分で写真スタジオを立ち上げ、写真家として動き始めたころからの彼女を描いています。リー・ミラーと言えばマン・レイの所に押しかけて恋人であり弟子という立場で写真家として活動を始めた事が有名です。元はモデルで凄い美貌とスタイルの持ち主なのですが、自分が被写体として撮られるより、撮る方に魅力を感じたようです。

 

マン・レイ作品では彼女の美しい姿を見ることが出来ます。申し訳ないですが、この主演のケイト・ウィンスレットさんより美しいです。そんなリーが何故写真家になり戦場へ出て行ったのか、この映画を観ると少しだけ解るような気がしました。とても頭の良い女性で真実を伝えていかないと、恐ろしい戦争は終わることが無いと訴えたかったんじゃないかと思いました。

 

 

最初はインタビュー形式で始まります。ある記者がリーにインタビューを始めます。しかしいつまでも真実を話してくれないリーに本当のことを話して欲しいと促すと、あなたが自分の事を話すなら私も話しますと言い、過去の話をし始めます。これ、私はリー・ミラーの経歴を知っているので、きっとこの記者は…というのが解ってしまいました。言葉の端々に気になる質問の仕方があり、気が付くと思います。

 

シュールレアリスムなどの芸術が盛り上がっていた1920年代の流れのまま、まだ芸術家たちが元気だった時代をリーは生きていました。20年代末にマン・レイと付き合い、マックス・エルンストやパウル・クレー、ミロ、ピカソなどと交流していたのだと思います。この映画の1938年時にも、既に自分で写真家として動いていて、芸術家たちとの交流は続いていたのだと思います。

 

 

ナチスが台頭し戦争が近づいてきた時代です。芸術家たちのような思想を持っている人々はナチスの標的とされて、随分と逮捕されたりしたようでした。あの規律を重んじるナチスドイツから見れば、海辺で裸になり酒やドラッグをやりながら芸術の話をしている人たちなんて許せなかったんでしょうね。嫌な時代です。

 

そんな時代に写真家として戦争を撮影をするために行動するリー。女性は戦場に入れないと言われても強引に入り込んで撮影を強硬していました。なんたって20代でマン・レイの家に押しかけたリーです。戦場に入るくらいなんてことなかったんじゃないかな。凄く強い女性でした。彼女に言われれば、誰も言い返せないくらい強かったんじゃないかな。

 

 

従軍写真家兼記者としてダッハウ強制収容所や酷い殺戮現場を撮影して周り、戦争のあまりの悲惨さに心に酷い傷を負っていきます。人間が人間のあんな姿を見てしまったら、精神的におかしくなっても仕方がないくらい酷いものでした。映画の中でも描かれますが、あまりよく見ない方が良いと思います。”作り物だね”と自分に言い聞かせて見ないと見続けられないです。

 

そんな経験の中で、ヒトラーの家の浴室で自らポートレートを撮影するという事をして、有名なリー・ミラーの浴室の写真が戦争が終わった象徴として伝えられます。ネットで彼女を調べると必ず出てくる写真ですので見てみてください。映画と同じ写真が出てきます。

 

 

女性従軍写真家として有名になったのは彼女が初めてじゃないかな。彼女が元モデルで美しい女性だったという事も彼女を有名にしたんだろうけど、それ以上に戦争で彼女が撮影した写真は衝撃的なものだったと思います。戦争後も写真家を続けていたようですが、展覧会も写真集出版もしていなかったようです。

 

映画の中では、彼女が幼少期に受けた性的虐待が心の傷としてずっと残っていたことも描かれていました。幼少期に傷つくとトラウマになって消えないんですよね。彼女はその傷を振り払うために強く生きることを望んだのだろうし、見られる(撮られる)側から見る(撮る)側に回ったのも、そのトラウマが関係しているんじゃないかな。人の視線がゾッとするように感じたりしますから、見られることに耐えられなくなったのかもしれません。

 

 

晩年はローランドと結婚して死ぬまで続いていたので、少しは落ち着いた生活をしていたのかなと思います。あの戦場を目撃したのですから精神的に壊れますよ。精力的に写真家の仕事をこなす元気はなかったんじゃないかな。ホント、現実を知ることは大切だけど、知り過ぎるのも問題だと私は思っています。汚いモノは見ないというのは現実逃避なのでダメですが、あまりに直視するのも人間には良くないにではと思います。

 

私、リー・ミラーのファンで中学生の頃に彼女の本「リー・ミラー 自分を愛したヴィーナス」を購入して今も大切に持っているんです。カッコイイ女性だなと思って憧れでした。その頃は彼女の心の傷を理解することもなく、美しくて頭も良くて何でも出来る人と思ったんです。でも今、この映画を観ると、彼女がとても苦しんでいて自分の人生を喜んでいたとは到底思えないなと思いました。難しいんですね。

 

 

私はこの映画、超!お薦めしたいと思います。私が好きな人ということで贔屓目もありますが、こんな凄い人がいたのだという事をぜひ沢山の方に知って欲しいです。話としては、ちょっと端折っている部分も多く、リー・ミラーさんの魅力が全て描かれているかというと難しいですが、こんな凄いことをした人だという事は解ります。ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界」