【東京国際映画祭】「西湖畔に生きる(コンペティション)」美しい自然の中でもマルチ商法は動いている | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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【東京国際映画祭】(16作目)

 

「西湖畔に生きる」

 

(コンペティション)

を観ました。

 

ストーリーは、

中国緑茶の産地として有名な西湖の沿岸に暮らす母親タイホアと息子ムーリェン。父親はムーリェンが小さい頃に出て行った切り、帰ってこない。タイホアは、茶摘みの仕事をしながら、ムーリェンを育ててきたのだ。ムーリェンも大きくなり、学校へ行きながらアルバイトをしている。

 

タイホアは、働いている茶畑の社長と付き合っており、再婚したいと思っているが、ムーリェンは母親の再婚を良く思っていない。息子が許さないので、タイホアは再婚を思い止まっていたのだが、その内に、社長の母親にバレて、従業員と結婚などさせないと凄い剣幕で怒鳴られ、会社と寮を追い出されてしまう。

 

 

既に独り立ちしていたムーリェンだが、まだ母親を養うほどではなく、タイホアは、茶畑の同僚に誘われ、儲かるという触れ込みの、”足裏シップ”の販売会に行ってみる。すると、それは俗に言う”ネズミ講””マルチ商法”というもので、誰が見ても危なそうなのだが、その中に引き込まれてしまい、危険に気がつかない。そして、タイホアはどんどんマルチ商法に引き込まれてしまう。

 

母親が危ない商売に手を出している事に気が付いたムーリェンだが、時すでに遅く、どっぷりとその世界に浸かってしまっているタイホア。どんなに話をしても、ムーリェンの話を聞こうとしない。そのまま突き放す訳にもいかず、母親についてマルチ商法に潜入するムーリェン。

 

もちろんマルチ商法なので、終焉が近づき、警察の手が近づいてくる。タイホアは、カッコいいビジネスウーマンになれたと喜び、気持ち良くなっていたのだが…。後は、映画を観てくださいね。

 

 

この映画、シビアな内容でした。西湖畔の穏やかな自然の中で、茶摘みをしながら、しあわせに暮らす話かと思っていたら大間違いでした。その美しい風景とは全く別の、ドロドロしたマルチ商法にハマっていくんです。極端な展開に驚き、どこに到達するのだろうと考えて観ていました。

 

最初は、優しい息子ムーリェンと、息子を大切に思う母親タイホアで、再婚話が持ち上がっても、息子が良い顔をしないので、思い悩んでいて、どうなるのかなと思っているんです。息子は、2人を捨てて行った父親を、今も探しているらしいのですが、どーも、母親は父親と連絡が取れていたようで、父親は母親を裏切り、恋人(男)との密会を見られて、出て行ったようで、今は僧侶になっているらしいんです。

 

そんな話になったので、親子のヒューマンドラマが展開するのかなぁ~と思っていたら、突然にタイホアが仕事を解雇されてしまう、え?どうなっちゃうの?と思ったら、マルチ商法の話に入って行くんです。

 

ビックリしました。それまでの話は、タイホアが、ずっと虐げられてきて、女には大した仕事は出来ないという時代に育ってきたので、大きな劣等感を抱えているんです。そんなタイホアに、あなたでもお金持ちになれます。ビジネスウーマンとして羽ばたけるんですと言われ、それに乗っかってしまうんです。いやぁ、普通はこんなのに引っかからないと思うのですが、劣等感が大きく、弱っていたからなのか、飲み込まれちゃうんですよね。

 

 

今まで稼いだお金も、相続していた分も、タイホアは全部つぎ込んでしまいます。マジで恐かった。何で気がつかないのか。だって、只の”足裏シート”ですよ。そんなもんをルートセールスで売れる訳がない。ムーリェンがどんなに話をしても、全く聞かないんです。きっと、実際のマルチ商法にハマってしまった人も、こんな風になるのでしょうね。

 

そのマルチ商法を主催している人たちも、パワフルで胡散臭いんです。でも、みんなで盛り上げて、相手が嫌だと言えないような雰囲気に持って行くんです。これは、弱い人はイチコロでしょう。劣等感を持っていたり、自分を卑下している人って、周りの人に嫌われるのを恐れるんですよ。私なんて、嫌われてなんぼと思っているタイプなので、平気で”アホなの?”と言ってしまいますが、それが言えないんでしょうね。可哀想でした。
 

マルチ商法の怖さも描いていましたが、貧困だと、もっと悪い方向に向いてしまい、這い上がることが出来なくなるということも描いていたような気がします。弱い人が、どんどん付け込まれて、もっと弱って行ってしまう。一応、周りの人が、助けようと声をかけるんだけど、もう、目に入らなくなってしまうんですよ。貧すれば鈍するというけど、そういうものなのでしょうね。

 

 

この映画、私は、お薦めしたいと思います。とても考えさせられる映画でした。映像の美しさに反して、内容はドロドロのマルチ商法ですが、そのアンバランスさが、また良い味を出していました。ムーリェン役のウー・レイさんと、タイホア役のジャン・チンチンさんが、とても美しかったです。日本公開は決まっていないようですが、もし、公開されたら、ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 


「西湖畔に生きる(コンペティション)」