「猫たちのアパートメント」
を観てきました。
ドキュメンタリー映画なので、内容は、
ソウル市内・江東区のかつてアジア最大と呼ばれたマンモス団地。老朽化で再開発が決まり、少しずつ住民の引越しや取り壊し工事が進んでいる。
そこには住民に見守られて250匹の猫たちが暮らしていた。猫たちのこれからはどうなるのか?猫と住民によるお引越し大作戦が始まる。
団地に住むイラストレーターや作家、写真家などの女性たちが中心となって活動する<トゥンチョン団地猫の幸せ移住計画クラブ>(略称<トゥンチョン猫の会>)。住民のさまざまな意見を聞く会を催し、猫たちの顔を見分けるために写真を撮り、イラストを描いてパンフレットを作る。
猫たちを再開発地域から安全な場所に移住させる。そんなささやかな営みから、猫という存在を通して、私たちが暮らす街や社会の矛盾や変化、未来へのヒントが見えてくることだろう。
都市空間における生態系、アニマルライツ、環境といったテーマも盛り込み、この社会を幅広く考察する。猫を人間の対等なパートナーとして位置づけることで、都市の生態系の問題に対するさまざまな考え方に目を向けさせる。
というお話です。
韓国でも”地域ねこ”という子たちが多くいるようで、トゥンチョン団地の取り壊しにあたり、その地域に住む猫たちを保護して、他の場所へ移すというプロジェクトのドキュメンタリーです。このトゥンチョン団地は、一つの町と言って良いほどのマンモス団地で、老朽化により、全ての団地を取り壊して、新しくするという事らしいんです。日本でも、一昔前にこういうプロジェクトがありましたが、その地域に住んでいた地域ねこはどうしたのかしら。
大きな団地なので、地域ねこの数もハンパありません。解っているだけでも何匹いたのかしら。それを、全部捕まえて、他の地域へ移すのは、簡単ではありません。まして、捕獲している最中に、子供を産んでしまっていたりして、どうすんの?って感じなんです。でもね、解体前に他に移さないと、建物の中に隠れてしまったりしていたら、そのまま壊されて、がれきの下敷きになってしまいます。
きっと、これだけ大きな団地なので、本当の事を言って、全ての子を助けられたとは到底思えませんでしたが、それは仕方ないのかな。大型の団地の解体は、丁寧にやっていたら終わらないので、とても荒い解体が行われます。取り壊す前にチェックはしますが、床下や天井裏などは、全く見ません。もう、既に何もいないという前提でのチェックなので、猫の心配などしないんです。韓国でも同じだと思います。
ボランティアの方々は、地域ねこの観察をして、何匹いるのかを把握し、少しづつ保護して他の場所へと移すようにしていました。その団地に住んでいて、猫の面倒をみていてくださった方々にも集まって貰い、どうしたら良いのかという会義も開いていました。こういう部分は、日本よりも韓国の人々の方が、とても協力的なように見えました。
トゥンチョン団地は、2017年に取り壊すことが決まり、2021年に撤去が完了したそうです。きっと、広い敷地に、ぎっしりと高層マンションが立ち並び、近代的な街が出来上がるのでしょうが、そこに、地域ねこが暮らしていける環境があるのかは解りません。いつの時代も、弱い者が被害を被るんです。
私もそうですが、建築を仕事にする者にとって、今の建物を補修していくよりも、建替えた方が収益が上がるとなれば、直ぐにでも解体して、建替えたいと思うんです。その時には、地域ねこの事など、何も考えません。人間の利益だけを計算するんです。とても残酷だと思いますが、そうすることで、沢山の人々の生活が潤う事も確かなんです。建替えとなれば、雇用が生まれますからね。
いつも、こういうドキュメンタリーを観ると、辛く、寂しく感じますが、私は壊す側の人間です。そして、壊して建ててこそ、経済が潤う事も解っています。カッコつけて、古い建物を大切にしましょうと言うのは簡単ですが、古い建物を老朽化から復旧し、頑丈にするのは容易ではありません。新しく建てるよりも大変ですし、お金も労力もかかります。なので、建て替えるのが最善ですし、出来れば、そこで同じように猫たちも暮らしていけるなら、そんな良いことは無いんですけどね。そう簡単にはいかないようです。
猫の事を思うなら、どうするのが最善策なのかと、皆さんが考えていて、素晴らしいなと思いました。日本でも、最近は地域ねこのルールが決まってきて、皆さんで大切に育てていこうという考え方が出てきましたが、ちょっと前までは、野良猫に餌をやるなとか、虐めたりとか、酷い話しもありました。そんな酷い世界を変えていけたらなと思います。
チョン・ジェウン監督は、2年半程かけて、このドキュメンタリーを撮影したそうです。ただ、可哀想という目線ではなく、猫たちと共存していく為にはどうしたら良いのかという事を考えながら撮影をしているように見えて、ただ、かわいいかわいいという映画ではありません。でも、とても愛を感じました。動物と共に、人間も生きていくという事を、考えさせてくれる映画でした。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。ドキュメンタリー映画なので、好き嫌いはあると思いますが、人間と猫の共存を、そのように実現していくのかという事を目的に、猫を追っているように見えて、凄く考えさせられました。良い映画でした。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「猫たちのアパートメント」