【フランス映画祭 2022】
「ワン・ファイン・モーニング」
を観てきました。
ストーリーは、
サンドラは夫を亡くした後、翻訳の仕事につきながら一人で8歳の娘リンを育てていた。ある日、公園でリンを遊ばせていると、やはり息子を遊ばせていたクレマンと再会する。クレマンは、以前から友人であり、仕事でも関わることが何度かあった。久しぶりの再会だが、リンの友達の男の子の父親だった事を知り、言葉を交わす。
サンドラは、忙しい仕事の合間を縫って、神経変則疾患の病気を持つ年老いた父親ゲオルクの面倒も見ている。どんどんと記憶が曖昧になっていく父親を心配しているが、どうしようもない。彼女と家族は、ゲオルグが老人ホームに入れるように奮闘しているが、思うように進まない。
不安と孤独を抱える中でサンドラは、再会したクレマンと何度か会う内に、自分を理解してくれる彼に、次第に惹かれていく。しかし、クレマンは既婚者であり、好きだからと言って一緒にはいられない。クレマンは、必ず戻ってくると言ってサンドラの前から姿を消し、サンドラはまた一人ぼっちとなってしまう。
そして、父親も老人ホームに入ることが決まり…。
後は、映画を観てくださいね。
この映画は、監督のミア・ハンセン=ラブさんの自伝的なお話だそうです。彼女の父親が年を取って、認知症になっていき、介護をしている時に、今のパートナーに出会ったそうです。
サンドラは、翻訳の仕事をしながら、娘と暮らしていて、近くに住む父親の面倒も見ています。サンドラの両親は離婚をし、母親は別の人と結婚し、父親には恋人がいますが、一緒には暮らしていないようでした。サンドラが娘を連れて父親・ゲオルグの様子を見に行くと、父親も喜んでくれて、穏やかな一時を過ごせているのですが、それが、段々と崩れていくんです。
ゲオルグの記憶が曖昧になっていき、元妻の名前も忘れ、恋人以外は信用出来ないような事を言ったり、サンドラを忘れてしまったりと、認知症が酷くなっていきます。本人は、自分がおかしなことを言っているという自覚は一切なく、それ故に、サンドラは、とても悲しくなってしまうんです。当たり前ですよね。仲の良い父と娘だったのに、娘を目の前にしても、誰だか解らなくなっていくなんて、そんなに悲しい事はありません。でも、それをゲオルグには言えないので、苦しみを相談していたクレマンに惹かれていきます。
内容としては、アンソニー・ホプキンスの「ファーザー」に近いかしら。あれを、世話をしている娘視点で描いている感じです。それほど、目新しいという感じではありませんが、ミア・ハンセン監督は、エリック・ロメール監督に影響を受けているので、オマージュ的な場面も多くあり、撮影の手法も似ているようでした。
うーん、でも、父親が認知症になっていく内容というのは、観るのがとても辛いです。自分にも同じことが起こってくるハズで、それを前もって、こんな事が起こるんですよって教えてくれているように見えて、観ていて辛いんです。どうしても年を取れば、これは避けられない事でしょ。解っているんですけど、それでも、こうやって映画にされてしまうと、映画という作品として見れなくなってしまうんです。良い映画なんですけど、どうしても難しいですね。
パスカル・グレゴリーさんが、ゲオルグ役をとてもリアルに演じていて、素晴らしいと思いました。パスカルさんは、もっとカッコイイ役をやられている事が多いのですが、今回は、どんどん記憶を失くして行く老人という難しい役でしたが、さすがに素晴らしかったです。メルヴィル・プポーさんは、主人公サンドラの恋人役で、イケメンの王子様的な存在でした。実際のミア・ハンセン監督のパートナーの方を見本にしたそうです。
レア・セドゥさんは、美しいだけじゃなく、弱っていく父親をどうしたら良いのかと悩み、悲しむ姿が、印象的でした。今や、フランスのトップですから、素晴らしいですよね。素敵でした。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。人生の最後には、こんな事が起こるんだという事を、リアルに、そして愛情深く描いていました。日本公開はどうなるのか解りませんが、これは公開するんじゃないかなぁ。良い映画でしたから。キャストも豪華ですしね。ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「ワン・ファイン・モーニング」