「夜明けの詩」心の傷は簡単には治らない。時間をかけて癒して行くしかないんだろうと思います。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「夜明けの詩」

 

を観てきました。

 

ストーリーは、

まだ冬が残るソウル。7年ぶりにイギリスからソウルに帰ってきた小説家のチャンソクは、コーヒーショップで時間をなくした女性と出会う。さらに、思い出を燃やす編集者、希望を探す写真家、記憶を買うバーテンダーといった、心に深い葛藤を抱えながらも人生を歩み続ける4人との出会いから、自身が心に閉ざしてきた記憶と向き合っていく。

というお話です。

 

 

まだ冬が残るソウル。小説家のチャンソクは、妻をイギリスに残し7年ぶりに帰ってくる。

チャンソクは、ある喫茶店で女性と休んでいる。女性はうたた寝をしていたが、目を覚ましてチャンソクに誰?という。そして、ふと気づくと女性はチャンソクの母親になっていた。その喫茶店で父親と出会った事を思い出していたのだ。母親は、明日には施設に入る事になっている。

チャンソクは、学生時代の後輩・ユジンと待ち合わせをしていた。自らの経験をもとにした小説を出版する為、彼女の勤めている出版社契約するためだ。懐かしい話をし、お互いの近況を話し、ユジンは辛い過去は終わった事と割り切る。



 

チャンソクは、ある街のカフェで休んでいると、懐かしい知合いの写真家に再会する。久しぶりと声をかけると、彼は胸ポケットから青酸カリの小瓶を出す。妻が末期ガンで彼女が死んだら自分も一緒に死ぬという。しかし僧侶に出会い、神頼みをしたら妻の具合が良くなったらしく、懐かしい人に会うと予言されたと言って、チャンソクとの再会を喜ぶ。

夜、バーに入り、酒を飲みながら人を待つチャンソク。するとバーテンダーが話しかけ、交通事故に遭い記憶を失くしたから、何か記憶をくれたら酒をおごると言う。人の記憶でも欲しいらしい。



 

ソウルで4人と出会い、チャンソクは心の奥に閉まっていた記憶を呼び戻す。逃げるのではなく、向き合わなければと思い、電話ボックスから電話をかけるのだが…。後は、映画を観てくださいね。

 

韓国映画で、オムニバスと言って良い作品かな。あまり話題になっていないので、面白くないのかなと思っていたのですが、私は、とても雰囲気が気に入りました。主人公のチャンソクが、向き合うべき問題に向き合えるまでの出来事が描かれています。

 

 

ちょっとネタバレになるけど、本編のあらすじに書いてあるから書きますが、チャンソクは、イギリスから単身で7年ぶりにソウルに帰ってきたという設定です。そして、会話から察するに、イギリスに奥さんは置いてきたらしいんです。離婚をしたのか、まだ結婚しているのかは解りません。でも、写真家との会話では、別れてきたと言っていたような気がします。

 

チャンソクの様子から察するに、どーも、イギリスに置いてきた妻との関係で、何か問題があるんだろうと思うのですが、最初の頃は解りません。自分の母親の思い出作りに付き合って、父親との思い出の場所へと連れて来て、カフェでくつろいでいる姿から始まります。認知症の母親を施設に入れる前に、少しでも昔を思い出してもらおうと連れ出したのかなと思いました。母と子供の深い愛を描いています。

 

 

次に、後輩のユジンと出版の打合せをします。そこで、ユジンが話すのは、少し前に付き合っていた年下の留学生の彼氏とのことでした。ある事がきっかけで、辛い別れになったようでしたが、もう済んだことだからと言っていますが、きっと後悔があるんだろうと解ります。彼らが歩いていた公園には、見えない子供と手を繋いで歩く母親の姿がありました。

 

そして、写真家の話しです。病床の妻が亡くなったら、自分も一緒に死ぬと言っているのですが、神頼みで妻が良くなったことを喜んでいました。絶望が目の前にあっても、人間は抗うものなのだという事を表していたような気がしました。この俳優さん、よく出てらっしゃる方で、上手いですよね。凄く気持ちが伝わってきて、何とも言えない気持ちになりました。

 

 

最後に、バーで出会ったバーテンダーのお話です。彼女は、交通事故で記憶を半分以上失くしたらしいんです。で、誰かに記憶を話して貰って、そんな事もあったのかもという気持ちになりたいんじゃないかな。どんなに忘れてしまっても、記憶を欲してしまう人間の気持ちが描かれていたのかなと思いました。要は、辛い事でも忘れたくないんですよ。それがあるから、人間は生きていけるんです。

 

そんな4人と出会った話をして、そこでチャンソクは、やっぱり過去と向き合おうと思ったんじゃないかな。彼が抱えている辛い過去は、4人以上に辛いモノだと思いました。簡単には忘れられないし、向き合うのだって、時間がかかるだろうと思いました。それでも、このまま無かったことに出来る訳は無いんです。いつかは、問題に向き合わなければならなかった。逃げられる事ではないんです。

 

 

この映画、とても遠回しなんだけど、チャンソクが抱えている問題を、4人に出会った時に、少しづつ気が付くように描いているんです。後から考えると、4人との会話の中に問題が入っていたんです。その時は、判らないのですが、後から考えると、あ、あの会話で言っていたことは、チャンソクの家族にも当てはまるんだとか、あの不思議な通りがかりの女性は、これを描いていたんだとか、計算されて描かれている事が多いんです。なので、観終わった後に、ジーンときて、感動してしまいました。

 

映像の雰囲気もとても良いんです。静かな雰囲気で、ガチャガチャする場面は一つもありませんでした。静かに描くことで、彼が背負っている問題が大きな事なのだと言うことを教えてくれていたのだと思います。何となく雰囲気が、日中合作映画「真夜中の五分前」という行定勲監督作品に似ていました。この作品は、主演が三浦春馬さんで、静かでとても素敵なんです。そんな空気が、今回のこの映画からも観て取れました。ごめんなさい、私は三浦さんが好きなので、この映画より、あちらの映画の方が好きなんですけどね。

 

 

私は、この映画、お薦めしたいと思います。超!を付けても良いくらいなんだけど、賛否がありそうな気がするんです。私は、観ている最中はよく解らなくても、観た後に、”あー、そうなんだ。”と解る映画って、結構、好きなのですが、そういう映画って、単館系の映画が好きな方でないと、ちょっと難しいので、万人に喜ばれる作品ではないかもと思いました。でも、良い作品なので、ぜひ、観に行ってみてください。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ

 

 

「夜明けの詩」