舞台「十二人の怒れる男」を観てきました。
ストーリーは、
ニューヨークの地方裁判所。
蒸し暑い夏の午後、ある少年が父親殺しの罪で裁判にかけられる。
3日間の審理を終え、最終的な評決は無作為に選ばれた12人の陪審員たちに委ねられた。陪審員たちで話し合い、合理的な疑いがあれば「無罪」を、合理的な疑いがなければ「有罪」の評決を下さなければならない。ただし、いかなる評決であれ、必ず全員の意見が一致することが条件だ。もし有罪の評決が下された場合には、自動的に被告人である少年の死刑が確定する。
法廷に提出された証拠や証言は、少年に圧倒的に不利なものであり、陪審員の大半は少年の有罪を確信していた。話し合いの前に予備投票を行うと-有罪11票、無罪1票。
どよめきと苛立ちが陪審員室に満ちる。
ただ一人、無罪票を投じた陪審員8番が口を開いた。
「もし冤罪だったら?ただ話し合いたいんです。」
陪審員室の空気は一変し、男たちの議論は次第に熱を帯びていく。果たして彼らはどのような評決を下すのか?
というお話です。
この戯曲ですが、凄く有名ですよね。何度も舞台化されているし、映画化もされていて、ちょっとアレンジを加えた作品も多数あります。そして、今回の舞台は、王道を舞台化したような内容でした。これこそがというような「十二人の怒れる男」というような感じです。
キャストも素晴らしい演技派と呼べる人々を集め、深く濃い内容になっていました。
No.1ベンガル No.2堀文明 No.3山崎一 No.4石丸幹二 No.5少路勇介 No.6梶原善 No.7永山絢斗 No.8堤真一 No.9青山達三 No.10吉見一豊 No.11三上市朗 No.12溝端順平 というキャストでした。
番号は陪審員番号です。この12人が、一人の少年の犯罪について話し合うんです。
法律にのっとって、冷静に話し合うべきなのですが、みんな人間です。自分の経験したきた範囲でしか判断が出来ません。裕福な人もいれば、貧困な人もいる。ホワイトカラーの人がいれば、ブルーカラーの人もいる。結婚している人、子供がいる人、独身の人、年配者の人、若い人、人それぞれなんです。なので、12人で同じ少年犯罪を見ているのに、全く違う判断をするんですね。
一応、みんな同じ裁判を見てきている訳ですし、検察、弁護士の答弁も聞いてきているんです。それでも、自分の知っている範囲でしか判断が出来ない。若い少年に対して、悪い印象しか持たない人もいれば、親に虐待されていれば怒るのは当たり前だと考える人もいる。低い階層の人間なら、簡単に人殺しだってしてしまうだろうという偏見を持っている人もいて、そんな人たちが話し合い、意見を一つにするなんて、まず無理だろうと思うのですが、段々と、それがまとまっていくんです。それが、面白いんですよ。
別に、誰もが自分の生活を告白する訳では無いし、仕事や家族の事を話す訳でもないんだけど、その判断をしていく過程で、その人の生活が垣間見えるんです。きっと、この人は固い職業で正しい判断をしたい人なんだろうとか、親子関係が上手く行っていないんだろうなという人だったり、いつもいい加減な仕事をしているんだろうなという人だったり、それがまた、面白いんです。
この戯曲は、本当に面白い題材だと思います。これ、ちょうど12人の陪審員の話なんだから、連続ドラマに丁度良いよね。一つの事件の判断をする為に集まった陪審員を描きながら、その陪審員一人一人の生活を1回づつドラマにしたら、面白そうだなと思いました。こういうのって、原作を変えるとなると、許可を取らなくちゃいけないだろうから、難しいかもしれないけど、面白いだろうなって思いました。
昔のお話なので、陪審員に男性しかいません。女性は選挙権も無かったし、陪審員にもなれなかったのかなと思いました。でも、犯罪は男女問わず起こすんだから、ちゃんと男女均等にいないと、その犯罪の本質は解らないですよね。現代は均等になっているだろうけど、そこら辺が、歴史を感じるところでした。
もう、出演していらっしゃる方々があまりにも演技が上手いので、観ているこちらまで、ドキドキしてきちゃったり、興奮してきちゃったり、怖くなってきちゃったり、色々な感情になるんです。やっぱり上手い役者さんって、観る人間を惹き込むんだなぁと改めて思いました。
私は、この舞台、超!超!超!お薦めしたいと思います。これは観るべき作品です。凄かった。楽しい作品も大好きだけど、これぞ演劇っていうこういう王道作品も、ぜひ、観ておくべきだと思いました。もし、チケットが手に入るようでしたら、ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「十二人の怒れる男」 シアターコクーン
https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/20_angrymen/