#13

 

「お客さん来てくれるやろか?」

開店初日、あとちょっとで店が開く。

外には東京の親方や、大将からも花輪が届いた。

主人の修行していたお店は、ちょっとした有名店だったので、その花輪はいい客寄せになると思った。

「いらっしゃいませ。ようこそいらしゃいました。おいでやす。」

私はどきどきしながら練習した。

「やっぱり、こっちに来たから『おいでやす』かなぁ?」

主人もカウンターの中で緊張した面持ちだった。

 

 

 店を始めても、なかなか店の扉を開けてくれる人はいなかった。

 

ガラガラ~

扉があいた。

 

「おいでやす~」

「あっ大将さん」

入って来たのは大将だった。

 

「今、店の方は若いもんにまかせてきたさかいに、ちょっとお祝いに来させてもろうたで。」

 

「大将ちょっといいですか? これ食べてもろても。」

主人は自分で一番自信のある料理を大将に出した。

 

「うん。合格!」

大将は微笑んだ。

 

 

お昼をまわると、ぼちぼち客が入って来た。

 

「なんか、いいお店やな」

客の声が聞こえる。

二人にはこの上ない、はなむけの言葉だった。

私達の新しい生活がスタートを切った。

 

テーブルにさした一輪挿しの花は希望の色をしていた。

 

挿絵:ゆきだいママ