第27回『悪人』 | 大崎由希オフィシャルブログ「ゆきちーたいむ」Powered by Ameba

第27回『悪人』

みなさんこんにちは。


今回の映画は『悪人』。

妻夫木聡さん、深津絵里さんが主演のこの作品、
『悪人』とはまた直球なタイトルですが、
このふた文字には、とても深い意味が込められています。


主人公の清水祐一は、出会い系サイトで知り合った女性石橋佳乃を殺してしまいます。
一般的に非現実的ではありつつも、実際にテレビではよく流れているこの手のニュース。
外側から見ている私達にとっては、加害者が悪い人で、被害者がかわいそうな人。
しかしそこには、殺す理由・殺される理由があったかもしれません。

祐一は、のちに出会い系サイトで知り合ったまた別の女性・光代と出会いお互いに惹かれあいます。
日常にはなにも求められず孤独な二人がようやく出会った、心から愛する人。
祐一は光代に殺人を告白しますが、光代は祐一を愛するあまり、自首を止めてしまいます。

主人公の祐一は、両親の代わりに育ててくれた祖父母を肉体労働で支えながら生計を立てる心やさしく孤独な青年。
被害者の佳乃は出会い系サイトで適当な男をつかまえてはセックスをしまくり、金持ちを捕まえたいイマドキの大学生。
その佳乃を捨てたのは、寄ってくる女と適当に遊んで捨てる典型的なイケメンお坊ちゃんタイプ。
捨てられた佳乃を助けようとするが、逆に罵倒され結果殺してしまう祐一。


「いったい何が、本当の悪なのか」

決して、殺人にも理由がありしょうがないことである、と言いたいわけではありません。
でも、悪かったのは本当に加害者だけでしょうか。

悪人を決めるのは、いつも当事者ではなく第三者です。
殺人を起こした祐一。自首を引きとめた光代。祐一を罵倒し侮辱した佳乃。佳乃を山道に置き去りにした大学生。当事者やその家族の心痛を無視した過剰なマスコミ報道。
きっと、どれも「悪」なのでしょう。

私達は、自分が「悪人」であることに普段見て見ぬふりをしながら、
大小様々な悪を繰り返しながら、責任転嫁を繰り返しながら生きています。

ありふれた事件の裏側や真実、そして「リアル」。

第三者には伝わらない真実が必ずある。
そんなことが鮮烈に伝わってくるように思いました。



また、清純派のイメージを覆しラブシーンを演じる深津絵里さん、
他キャストのみなさんも本当に素晴らしい演技を見せています。

皆様もぜひ一度、見てみてくださいね♪


■『悪人』
吉田修一の長編小説を2010年に映画化。
第34回日本アカデミー賞にて、最優秀主演男優賞、最優秀主演女優賞、最優秀助演男優賞(柄本明)、最優秀助演女優賞(樹木希林)、最優秀音楽賞。
他、様々な賞を受賞。

それでは、
また、素敵な作品に出会えますように☆

大崎由希