バッハの鍵盤曲を聴き始めた頃はグールドの「インヴェンションとシンフォニア」「パルティータ」など聴いていたのですが、それとは別にとても気になっていた一枚がありました。E・フィッシャーの「半音階的幻想曲とフーガ」などが収められていた一枚でした。
「半音階的幻想曲とフーガ」
なんと格好いい名前なことよ!!
曲がどんなものかも知らずに買いました。
「半音階的幻想曲とフーガ」はもちろん一緒に収められていた幻想曲なども大好きになりお気に入りの一枚でした。
CDの時代となりLPは手放してしまったのですが、CDで発売された時にすぐに買い直しました
その「半音階的幻想曲とフーガ」を聴きました。
古い録音ですがピアノ・ソロということもあって十分に聴ける音質
音楽評論家の遠山一行氏がフィッシャーのピアノの音を「指先から愛情がポタポタと落ちてくるよう」と評してしたのを読んだことがありますが、
その形容が成る程と思わせるような、温かみのあるロマンティックなもので懐かしく聴くことができました。
短い曲なのでもう一つチェンバロの演奏で、ということでラックに眠っていたものから取り出したのがこちら
トン・コープマンの演奏です。
最初の音が出た瞬間からびっくりしました、その鮮烈な音にです。
長岡鉄男氏流の表現をお借りすると、ハードでシャープでダイナミック
演奏ノイズもそのまま再生され、正に眼前の演奏を彷彿とさせる生々しさ!
この鮮烈なチェンバロを聴いて、頭に浮かんだのが長岡鉄男氏がブランディーヌ・ヴェルレの同曲の蘭フィリップス盤を次のように絶賛していたことです。
驚異的に鮮烈、圧倒的な重量感、余韻の美しさは比類がない超A級盤
ここまでいかないかもしれませんが、チェンバロの優秀録音として通用する第1級の録音には違いないでしょう。そしてそのダイナミックなチェンバロの音にただただ聴き入り、ピアノとチェンバロという楽器の違いだけでなく、演奏様式の違いも明確に現れた二つのバッハを楽しむことが出来ました