私が女装家として活動を開始したのが

今から5年前。

 

これまで幾多の女装さんと女装好きな男性 

ニューハーフさん
または、この女装業界に特別関心が強いわけではない方々との

出会いや交流があったわけだが 

 

あまり詳しくない方々に説明すると

この女装業界というのは狭いコミュニティーである。 

 

この業界で商売をする事や
イベントを開くという事は 

店舗を立地する駅が違っていたとしても


商店街で店を出すことや 

デパートのテナントとして出店する事と相違ない部分がある。 

皆ある程度、共通の目的をもってやってくるため
 

顔なじみと会う確率がとても高い。

または、話した事は無いが

見た事があるという人といった具合に

顔を合わせる機会が

よその業界と比べて格段に多いのが特徴だ。

 

 

それが故に起こった珍事とでもいうべきなのか

変わった出来事があった。 

 

 

 

 

 

もう4年くらい前の事。

 

 

 

 

 

私がかつて女装デリヘル嬢をしていた頃 

デリ嬢として使っていたTwitterアカウントのdmに

 

「会いたい」という 

誘いのメールを送ってきた男性がいたのだが 

 

この業界での会いたいとは 

ほとんどがネットナンパである。

 

加えて、その内容は 

女装コミュニティースペース内でセックスをしたい。

という事だった。

 

 

だが私は当時デリヘル嬢であり

セックスをするサービスの対価として 

金銭を受け取る仕事をしていたため 

 

特別な理由なく、プライべートで

赤の他人とはセックスはしなかった。

 

なのでその誘いを丁重に断ったうえで

「お店をご利用下さい」と

在籍しているお店のURLを紹介したのだが

 

そのdmを送った男性は 

お金を支払いたくないのか 

ただでセックスがしたいとの事で

 

あまりに誘いがしつこかったため 

その男性のTwitterアカウントをブロックした。

 

 

その出来事から半年以上が過ぎた。

その頃の私はすでにデリヘルをやめていて 

女装AV監督となっていた。

 

私は女装の集まる飲み屋さんで 

一人で飲んでいた。 

 

男性と女装が来店し
談話を楽しむ場所。

互いに良い相手が見つかれば 

そのまま外でホテルにでも行くのも

 

楽しみの一つでもあるのだが

 

飲んでる私に、数名の方が話しかけてくれて

軽い挨拶から始まり
楽しい痴話話をしてくれた。

 

談話の最中

私の横のカウンター席に座った男性は 

どこかの会社の社長だという。

 

稼ぎも良いらしく業績が上々だと 

店員や私に語っていた。

 

それだけなら良かったのだが 

少々自分語りが過ぎたようで 

 

「今日も部下を叱ってやった」

「従業員はろくに仕事ができない」

 

など、不満というよりは

自分の会社での立場をアピールするような

会話が数十分続き 

 

会話がつまらなすぎて
私は退屈していた。

 

私の返事も適当になり始め 

ただ相槌を打つだけになってしまったが

社長の自慢話は一向に終わらない。

 

 

私は退屈のあまり 

スマホを手に取り 

自分のTwitterのタイムラインを眺めていたら 

社長はその画面を見てこうつぶやいた。

 

社長「君もTwitterやってるんだね? 

僕もやってるんだ。結構フォロワー数多い方だよ

良かったら交換してみる?」

 

 

そう言われて 

 

そのアカウントの名前とプロフ画像を見てみたら 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私がブロックしたそのユーザーだったwwwwwwwwwwww

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

笑いが止まらなかった。 

 

私も意地が悪いのかもしれないが

 

「社長さん!私社長さんブロックしてるよw
結構前にデリヘルやってる私にdmで

ただでやらせろって何度もdmするからブロックしたんだよww」

 

 

 

 

そういうと社長の顔はどんどん青ざめていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして核心的な一言を私は言ってしまった。

 

 

 

 

 

 

「ところで、稼ぎのいい会社の
社長やってんのに 

デリヘルすら頼めないんですか?

2万ぽっち渋るんですか??」

 


女装の業界とは一種の仮想空間のようなものだ。
関わるもの同士
幾度がその人の本名も知らないし
職業も本当の事を言わない事も多い。 



身バレを防ぐ意味でも 
匿名性が強い業界なのだ。







その仮想空間内で
必死に作り上げてきたキャラなのか
本当に社長なのか
実に気になる所ではあるが 





私のその問いかけに対し 





長い沈黙が続いた。



シャチョーからすれば

凍り付くような気まずい時間
私にとってはこれ以上ない笑いの時間の到来である。




すると自称社長は 

「トイレに行ってくる」





そういって席から外れた。





数分して戻ってくるかと思えば

私からかなり離れた場所の席に座り

また他の女装の横で 

私に話していた自慢話をリピートしている声が聞こえてきた。

シャチョー本人からすれば

自分のすごさを誇示するエピソードであっても

私からすれば

すべらない話しをしている様にしか聞こえてこない。


正直これはもう笑うしかなかった。
だがもうこれ以上いじってしまっては

シャチョーもメンツ丸つぶれなので 

何も言わずに静観することにしていた。 










狭い業界がゆえに起こった珍事ともいうべき出来事。



多少自分を偽るのは

どの世界でもあっても
あり得る事で、別にかまわないとは思うが







そのシャチョーは少々やりすぎたようだ。



それ以来、シャチョーとは不思議なくらい
この業界で出会わないし

新規アカウント等で再度交流をはかられた事もないが
もしもいつかどこかで出会ったら 
こういってやりたい。





「シャチョー!!!
部下の教育、ご苦労様であります(∀`*)ゞ」





終わり。