第一印象について考えてみた。
先日、久しぶりにお会いした方に、自分の講座云々の話をしていたなら、途中どうも話がかみ合わないと感じることがありました。実はその方、私が「美術史」の講座を開講しているとは思っておらず、「絵を描く」講座だと勘違いされていたのです。
なぜそう思うのか。。最初にその方に出会った時、場所はアメリカで、当時私は大学で美術史を専攻すると同時に、地元のアートスクールでペインティングの実技の講座も取り、カフェで個展なども開催していたからです。
美術史を勉強する中で、それを外部の方々に“公開”する機会はないですが、描く方に携わっていると“展示”するチャンスはどんな素人でもめぐってくるわけです。
当然ながら、展示する活動の方が目立つわけでして、いつしか、「宮本さんは絵を描く人」という印象がついてしまいます。
そして、本当は他のことを目指していたり、その後大きな転換があったとしても、人はその人に対する“第一印象”を忘れることはしません。
例え、ここで、“いやいや、今私はもう絵は描いていないんです。。美術史を教えているのです。”と訂正しても、また次回お会いした際には、“第一印象”に戻っているのだと思います。そして、それは決して相手が悪いとかそういう話ではなく、ただただ、印象ってそういうものなんです。私自身も知らず知らずのうちに、他の方の第一印象に振り回されているのかもしれません。
以前ブログかSNSで似たようなネタは書いたかもしれません。ヒューストン美術館時代の上司であったキュレーターがある日、他州にある有名美術館へ転職すると言うのです。ヒューストン美術館は全米でもトップ10にランクする規模の美術館ですし、そのまま頑張れば、ヨーロッパ美術部門のトップキュレーターになることは(順番的に)間違いないというポジションでした。しかもお子さんが誕生されたばかり、またご主人は地元の会社に勤めており、わざわざ他州の美術館へ転職する意味があまりよく理解できませんでした。
そのことを本人に聞いたなら、”If I stay here I will always be seen green” という返事がありました。
要は、彼女にとって、ヒューストン美術館とは、博士号取得直後に入った最初の美術館だったので、その“新米”的なイメージがずっとついて回るというのです。そのイメージを払拭し、キャリアアップを図るのには、転職しかないと。。どんなに居心地が良くても転職しないと、キャリアアップはできないのだと言われました。これは美術館業界のみならず、他のお仕事に関しても同じなのだと思います。
彼女のその判断は正解であって、その後LAのゲティから現在ワシントンDCのナショナル・ギャラリーでチーフ・キュレーターとしてご活躍をされていらっしゃいます。全米一の美術館です。
結局のところ、何が言いたいのかというと、アーティストの「海外でのデビュー」についても同じだということ。
最初が肝心、第一印象が一生?つきまとうのであれば、その土地の皆さんに見てもらう準備は整っているのか、、ということです。
Are you prepared?
私が「英語でアート!」の本の中で、「アメリカ南部のおおらかさ」というコラムを入れたのは、これに関連します。
初めてのアメリカ、あるいは、初めての海外で、いきなり世界のアートの中心地、ニューヨーク進出していいの?
準備できているの?
なぜ自分はこの作品を作っているのか、コンセプト的なこと、あるいはプロセス的なこと、ちゃんと話せるの?
お客や評論家に質問攻めにあっても、対応できるの?
この時の観客の印象はずっと残るということです。
作品に対する印象、アーティストトークの印象、その受け答え方など。
そして、その時のイメージを後に払拭したいと思うのなら、、
時間かかること間違いなしです^^;
海外進出は、戦略的に長期展望で考えるといいと思います。
Ask yourself,
"Am I prepared?"
***「英語でアート!」のコラム“アメリカ南部のおおらかさ”おススメします!***
*Amazonサイト: https://www.amazon.co.jp/英語でアート-佐藤-実/dp/4837310664
宮本由紀
~ “Education is not a preparation for life, Education is life itself” (John Dewey) ~
■Art Allianceは「リベラル・アーツ」の知識と海外で通用する「英語力」の両方を身に付けるための新しいスタイルのスクールです。西洋美術史を通して、英語・英会話を学びます。外国人と対等に話、コミュニケーションが取れる「グローバル・パーソン」を増やすことを目的としております。