『十年屋4ときどき謎解きいたします』廣嶋 玲子 絵:佐竹 美保 静山社 読了日:2020.12.1

 前3作も、読書日記で紹介している私の好きな『十年屋』シリーズの4作目。

 何に代えても守りたいもの、大切なもの、時には秘密や自分の中の嫌な感情だって、心底から預けたいと思うものを持つ人だけがたどり着ける、魔法街にある時の魔法使い、十年屋が営む『十年屋』。

 預ける対価は、自分の寿命1年。自分の時間を1年差し出す事で、10年間預かってくれ、何時でも受け出したい時に受け出せて、10年の期限が来て、預けたものが必要なければ受け取らないことも出来る『十年屋』に、今回も、事故で記憶喪失になった青年が、ふと思い出した大切な鍵を求めて訪れ、何くれとなく親身に面倒を見てくれて親友だと思っていた青年に隠されていた黒い秘密が明るみになったり、ある日隣に越して来た意地悪な隣人から亡き祖父の大切な木を預ける少女など、様々な事情から秘密や大切なものを預ける人々が訪れる。

 オレンジ色のモフモフの十年屋の執事猫カラシも、美味しいお菓子と飲み物と、愛らしい言葉と笑顔で訪れる人々をおもてなし。

 今回は、ちょっと謎を解いてみたり、ゾクッとするお話も有りつつ、全体に流れる色彩は温かく優しい『十年屋』の世界に、読み終わった後は、微笑みが残る。

文:麻美 雪