ツイラクした恋。

ツイラクしそうな恋。

そんな恋、世の中のどれくらいの人が経験あるんかな?


私が好きな本に『ツ、イ、ラ、ク』というのがある。

著者は姫野カオルコさん。


先日の直木賞を取られた時の姿がインパクト大だった。だってジャージだから。
ジャージにタオルだった。


それまで本人を写真でも見たことはなかったけど、見た瞬間、裏切られた感じは全くなく、まさにこの人イメージとおり!
だった。

確かにジャージは予想外だけど。

でもコメントを読んでも、なるほど。としっくりきた。


で、久しぶりに読み返したくたって読んだのがツ、イ、ラ、ク。


この本はもう何回も読んでる。

読書は多いほうだと思うけど、こんなに何度も読んだ本はない。

この本は私にとって衝撃的な存在感だった。

あまりに生々しく、リアリティで、まるで自分がその場面に出くわしたかのような、自分の身辺で起こってるかのような、もしくは私が主人公を知ってるかのような、私の拙い語彙では上手く表現できないのが申し訳ないけど、とにかく一度読んだ時の衝撃と印象は他のどの本でも得られないものだった。

おそらくその一つの理由は、著者の出身地と本の舞台の街が私にとってはとても親近感のわくものだったからかな。

そして本の中の会話が関西弁だから。
正確に言うと関西弁というより、京都よりの滋賀弁、というのが正しいかな。

多分関東の人や関西圏以外の人にはわかりづらい違いかもしれないけど。

例えば『そこにいたよ』というのを大阪の人なら『そこにおったよ』というところ、京都や滋賀なら『そこにいはったよ』となる感じかな。
まぁ、『おったよ』という人もエリアで限られてるかもしれんけど。
ちなみに『よ』とつけるのはまれかもなぁ。
だいたい、『で』となる。

あとこれは、多分発音の仕方が想像できないかもしれないけど、『言わないからさぁ』なんて言葉は『言わんさけよ』なんて言ったり。
ザ・ローカルな者同士の間ならよく使ったりする。使うというか、出てくる。勝手に。

本にも出てくるけど、質問系で『行かないの?』なんてのは、大阪弁なら『行けへんの?』となるが、京都や滋賀なら『行かへんの?』となる。

なんとも不思議。でもやっぱり、勝手に使い分けできる。

こんな言葉での会話が続くから、この言葉を理解できる私にはありありとその場面を想像できる本なんだと思う。

本のストーリーは調べればわかるけど、読んでみればなんとも濃い恋。

そしてなんとも切ない恋。


もちろんそう思うかどうかは人次第だけど。

私にとっては、これ以上ない恋の真髄かな、なんて本です。


この本のタイトルにあるとおり、男女がツイラクするかのように恋に落ちていく話だけど、途中で出てくる言葉が忘れられない。
著者が書いているその言葉は、

『恋とは、するものではない。恋とは、落ちるものだ。どさっと穴に落ちるようなものだ。御誠実で御清潔で御立派で御経済力があるからしてみても、あるいは御危険で御多淫で御怠惰で御ルックスが麗しいからしてみても、それは穴に入ってみたのであって、落ちたのではない。[アッ]。恋に落ちるとは、この[アッ]である。こんなことはめったにないのである。めずらしく落ちても、かたほうだけが落ちているだけで、その人間を落とした相手は落ちていないことが多い。ふたりして[アッ]と落ちるなどということはまずあるものではない。ルーレット一点賭けなどおよびもつかない低い確率である。五台のルーレット台で一点賭けして、五台ともアタルくらいの確率。』


恋とは、するものではない。


確かに。


ここに書かれているような恋をしたことがあるかな。
というと、ない。

[アッ]ということも、ほぼない。
私の30年以上の記憶の中には。
確かに、タイプな人を見かけた時は[アッ]と思うけど、そこから穴に落ちたことはない。


こんな類稀なる恋をこの先することはできるかな?

どうせなら、一度同時にはまってしまいたい。
そして人生おわるまで、そのまま過ごしたい。


そんな風に思わせてくれる本です。


ただ、落ちてからスムーズにいけば、の話だけど。



人の恋は様々だし、好きという感情とは別に穏やかな気持ちで過ごせるから、という理由で一緒にいる人がいれば、どんなに理不尽な相手であっても自分の愛情が強すぎて離れられない人もいたり、好きかどうかは曖昧だけどとりあえず誰かといたいから、という理由で一緒にいる人も。
ほんとそれぞれ。

そして私は、、

気づけば好きになっていた。
だけど、最初は本当になんの感情もなかった。むしろ、感情が沸くことなんてありえないと思ってた。
だけど、何かのきっかけからどんどん心境が変わっていった。
タイプでもなんでもなかったのに気づけば自分の目には彼以外魅力に見えないほどの存在になっていた。


まさに、恋愛という錯覚を引き起こしてた。そう、恋愛は錯覚以外の何物でもない!
と教えてくれたのは中学の恩師だけど、まさにその通り。

不思議だなぁ、、ほんとに。


だけど錯覚だからいつか覚めてしまう。
覚めた時の立場次第でそりゃもう、しんどいしんどい、、


次はもう、穴に落ちてそのまま上がれない。私だけじゃなくてお互いが。


その時は来るかな。


そろそろ来ないかな。



しばらくまた、ツ、イ、ラ、クをリピートして読みそうです。

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夜の散歩

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