息子さんが小学校の先生をしているという方から聞いた話。
息子さんであるその先生は、ある小学校の校長先生から請われて、その学校に赴任し、小学5年だったか6年の担任を任されたそうです。
なぜ、彼がその学校のクラスに赴任することを請われたかというと・・・
そのクラスには暴力的な子が一人いて、いわゆる学級崩壊状態になってしまったからだとか。
そして前任の女性の先生が心を病んでしまい休職してしまったのだそうです。
そして別の先生がそのクラスの担任になったのですが、またその先生も心を病んでしまった。
そのため、若くて力もある知り合いの息子さんが抜擢されて、そのクラスの担任になったんだそうです。
しかし、暴力的なその男の子の行動は変わりません。
そんなある日、詳しいことは忘れましたが、暴力的なその子は、先生に反抗しナイフで切りつけてきたんだそうです。
幸いナイフは、息子さんの服を切るだけで済んだそうですが、一歩間違えば、警察沙汰になっていたかもしれません。
ここで考えてみたいのですが・・・
知り合いの息子さんのクラスのその子は、粗暴性や乱暴な心があるから暴力的なんでしょうか?
もしかすると他の心理学では、そのように考えることがあるのかもしれませんが、アドラー心理学では、別の見方をします。
その点で、野田俊作先生は、次のように述べています。
子供の頭の中に粗暴性とか乱暴な心とかがあるわけではないんです。「あの子が暴力を振るう心理はどんななんでしょうか」ってよく聞かれるんだけれども、そんなものはないんですよ。暴力を振るわないと目標を達成できないようなクラスの構造があるわけです。だから、そのクラスの構造がある限り、その子は暴力という方法で目標を達成するかもしれない。
その目標とは、先生の注意を引くとか、やりこめることができるとか、周りの子たちからの一目置かれることで、クラスに所属することだったりするかもしれません。(あくまで推測ですが)
でも、そんな形で所属しようとするのは問題ですし、後味も悪いものです。
では、そんな子がいた場合、どうしたら?
野田先生の答えは明快です。
暴力的な子供がいたとしたら、暴力的であるという悪い癖がついているのではなく、暴力的でない方法で、まだ、やり方を学んでいないんです。余計なものがつけ加わっているんじゃなくて、必要なものが欠けているんです。
だから、必要なものを教えてあげれば、余計なものを使わなくてよくなるんです。だって、暴力的な方法だとか、あるいは消極的な反抗だとかというのは、ちゃんと言葉でもって上手にお願したり、上手に断ったりするつきあい方に比べれば、ずっと能率が悪いですからね。
例え目標を達成しても後味が悪く終わっちゃうわけだ~、そんな不便なやり方を好む人間がいるわけがない。それを好むのは、いいやり方をまだ十分に身につけていないからです。だからいいやり方を学んでもらえば、その人たちも上手に我々と付き合ってくれるようになります。
暴力的な子は、自分の目標を達成するための方法として、暴力的な方法しか知らないために、その方法を使い続けてしまうというのです。
その際に、きっと先生など相対する人が、「なんだ、その態度は?(怒)」などとマイナス感情を交えて対すると、火に油を注ぐことにもなりかねません。
マイナスの感情を交えずに、冷静にお願してみたりして、いいやり方を学んでもらう。
そうすることによって、先生も言われるように「その人たちも上手に我々と付き合ってくれるようになる」のだろうと思います。
そう考えると、冒頭の知り合いの息子さんも、やり方というかその子との接し方を変えることができたとしたら、ナイフを持ち出されるということもなかったのかも知れません。
ちなみに、家庭で暴力的でない子に育てるための秘訣があるそうです。
どうするかというと・・・
物のおねだりなんかに来た時に、暴力的な、乱暴な言い方をしたら、「その言い方では聞きたくありませんから、聞きたくなるような言い方を工夫して、もう一度来てください」と言って、小さい頃からしつければいい。
そうすると暴力的ではない、おだやかな言い方をすれば目標が達成できて、脅したり、あるいは泣いたり、あるいは暴力を振るったりしたら、目標を達成できないということを、小さき頃から学びます。そして暴力的ではない大人になります。
なるほどです。
さて、今日の記事の赤字で示した野田先生の話は、「ボクたちのアドラー心理学入門3」という本からの引用です。
この本は、野田先生のいくつかの話と中学校の先生のアドラー心理学実践記をまとめて一冊の本にしたもの。
この話、とってもおもしろいので子供の反抗で悩んでいる親御さんや先生などには、ぜひとも読んでいただきたい内容ですが、残念ながらすでに絶版。
でも・・・
このまえ、あるところで4冊(新品)売られているのを発見してしまいました。
もし、アドラー心理学を学んでおられて、ぜひとも読んでみたいという方がいらっしゃれば、販売先をお伝えしますのでメッセージ等でお知らせください。