「へ~、この子すご~い!」
そんなふうに思った子がいます。
それは私が学生の時、そろばん塾で採点のアルバイトをしていた時の話です。
その子は、教室に通っている5年生の男の子でした。
その子は、その町でも、どちらかというと“いなか”と思われる区域に住んでいる子(多分、農家の子)。
たまたま、その子がプリントを終えて、私も教室を締めて帰るまでに時間があったので、少しの時間、話す機会がありました。
家で、お父さん、お母さんの手伝いをしていることを含め、いろんな話をしました。
すると、その子には欲しいものがあるという話しになり、それが何かは忘れましたが、当時としても結構、高価なものが欲しいということを語ってくれました。
そして、それを、どのように買うのか、聞いたところ、お小遣いを貯めて買うというのです。
その時、小学生がお小遣いをためて買うには、けっこうな時間がかかると思いました。それは確か、数万円はするもの!
でも、自分で買うというのです。
おそらく、ご両親も、安易に物を買ってあげる方ではなかったのだと思います。だから・・・
その子が「すごい」と思ったのは、当時から、欲しいものはすぐに親から買ってもらえた子が多かったからなのかもしれません。
そんな子が多いなか、欲しいものは、我慢して自分でお小遣いをためて買う。
そんな決意をしている子と共に、ご両親もすごいなと感じたわけです。
きっとご両親は、欲しいものでも少し我慢して、自分で買うということを、子どもと話し合って納得させていたに違いありません。
さて、現代社会は、豊かになったおかげで、我慢をすることもなく、何でも物が手に入る時代になりました。
欲しいものは、お金がなくてもローンを組めばすぐに手に入ります。
コンビニがあるので、食べたいものを、夜中でも食べることができます。
そして子供が欲しがるものを買ってあげられるだけの経済力もある!
でも、それによって失ったものも大きいような気がします。
例えば、先日、子どもがストレス乗り越えて成長するために、親がしてはいけない5つのタブーというものを紹介しました。
それは石田一宏さんという精神科医の方の著書「キレる子、キレない子 精神科医からのメッセージ」に書かれていたものです。
その5つ目のタブーというのが、
「欲しいものをなんでも買ってやっていないか?」
石田さんは、こう述べます。
5つ目は、欲しいものが何でも手に入る、してほしいことは何でもしてもらえる、いわば甘やかされてしまうという生活です。何でも要求が通ってしまう。「何か買って」というと、文句は言うけど結局、買ってしまう。あるいは子どもが何かしてほしいと言えば、親が何でもしてやってしまう。そのように子ども自身が発達段階にふさわしい課題を乗り越えなくても済んでしまう場合には、生きる力、つまり自分で乗り越えていく力が育たないのです。そして、新しい事態に遭遇したときにどうしたらいいかがわからなくなってしまうのです。
本来であれば、子どもは課題を自分で乗り越えていくことを学ばなければなりません。
そして課題を自分で乗り越える力が育っている子は・・・
子どもたちは、思春期に近づくにしたがってたくさんの葛藤を体験しなければなりません。小さいときからストレスを乗り越えてくる子は、そういう葛藤を決していやがりません。「困っちゃったな」とか「どうしようかな」とか、そんな悩みをちゃんと受け止めて自分で考えようとするわけです。
思春期になっても、それまでにたくさんの葛藤を経験し、乗り越えてきた子は、石田さんが述べるように悩みをちゃんと受け止めて自分で考えるようにする。
なぜかというと・・・
もし、欲しいものがあっても、それをすぐに買ってもらえずに我慢しないといけないとしたら、子どもの心の中には、圧倒されてしまうようなマイナスの感情が渦巻くでしょう。
「こんなに欲しいのに、お母さん買ってくれない」
そして、そのようなマイナスの感情が芽生えた時は、チャンスです。
つまり葛藤の処理の仕方を学べる大きなチャンスなんだと思います。
実際に、ストレスを感じてそれを乗り越え、葛藤の対処の仕方を学んできた子は、思春期という嵐がきても十分対処できるでしょう。
しかし、あまりストレス体験をしたことのない子は・・・
新しい事態に遭遇したときにどうしたらいいかがわからなくなってしまうのです。
それでは、まずいですね
そう考えると、子どもたちには、たくさんのストレスを経験してもらい、自分で葛藤の対処の仕方を学んでもらいたいものです。
そのためには・・・
子どもの要求をのんで、何でも買ってあげてしまいますか? それとも・・・?