イラストストーリー『うさことわたし~希望の春~』 | うさぎのゆきあと~電動車椅子のパステル画家・ゆきの日々~

イラストストーリー『うさことわたし~希望の春~』

『シリーズ・うさことわたし』/
最新作『うさことわたし~希望の春~』
2011年3月23日)


うさぎのゆきあと~電動車椅子のパステル画家・ゆきの日々~



ようやく、ようやく、長い雨が止みました。水たまりには、晴れた青空と桜が映っています。

うさぎのゆきあと~電動車椅子のパステル画家・ゆきの日々~


車椅子の私は、うさこと一緒に外へ出かけました。

「うさこ」は、私自身の分身です。そして、最近思うのですが、「うさこ」は私の心のなかにいる、私を支えてくれるひとたちの化身でもあると想っています。

私は、歩きながら、わたしとうさこと、みんなで、空を仰ぎました。


うさぎのゆきあと~電動車椅子のパステル画家・ゆきの日々~

青い空に、桜が満開でした。

うさぎのゆきあと~電動車椅子のパステル画家・ゆきの日々~


「わぁ、キレイ…。」今年も桜が見れて、嬉しい気持ちでいっぱいです。私達は空を仰ぎ、見つめていたのは、桜と、そして、『希望』そのものでした。

私達の目には、虹の彼方へ、前を向いて走っている自分達が見えました。この新たな春、その先もずっと希望を持ち続けていこうと強く、強く、願いました。

うさぎのゆきあと~電動車椅子のパステル画家・ゆきの日々~

雨上がりの大きな虹は、さまざまな想いと風景を、ひとつきにつないでいきました。春風が吹くなか、舞い落ちる桜の花びらは、今年も新たな春の旅立ちを勇気づけてくれるようでした。

*

この絵は「過去の体験の絵」はもとより、こうでありたいという「未来への願いの絵」です。前を向いて歩いていきたい、というテーマで2月中旬頃から描き始めました。一人の人として、自立して自分らしく歩きたいという想いが強かったのです。

この絵を描きかけの途中で、日本を揺るがす、大きな出来事が起きました。2011年3月11日、「東日本大震災」でした。わたしの住む茨城県もかなり揺れが激しく、何かが壊れるようなすさまじい音がしました。正直、死が頭をよぎりました。ライフラインがとまり、停電になりました。わたしは人工呼吸器等を使用して、電気がないと生きていくことができません。マンションの上のほうの階に住んでいますが、エレベーターが停止して地上に降りることができませんでした。救急隊員のかたに救助していただき、マンションを脱出、病院へ搬送してもらい、呼吸器等の電源を確保することができました。

電気がつかず部屋が暗くなっていくなか、救急隊員のかたが到着するまで、地震の恐怖でガタガタと震え、呼吸器や吸引器のバッテリーがなくなったらどうしようという不安でいっぱいでした。家の中には「大切な物」はたくさんありましたが、とにかく、体(いのち)だけは、外に持っていこうと想ったのを覚えています。

避難入院している間も、描きかけの絵のことが気になりました。何とか、あの絵の続きを描きたいと想い、完成する日を願いました。これからどうなるのか不安な日々でしたが、この絵を完成させることが、私にとって、生きてゆくエネルギーになる気がしたのです。

退院し、この絵に再会し、再びパステルを握りました。

傷が無かった描きかけの絵。

助かった命。

支えてくれる多くの、多くのもの。

ひとつひとつが奇跡です。

…3月23日、新しい絵を完成させることができました。

震災は大変な出来事ですが、絵に込めた「願い」は深くなったように思います。この絵は「願いの絵」と呼ばれています。

今回、呼吸器ユーザーということで、電気がないと生きていくことができないのだということを痛感しました。うさことわたしが共演するこのシリーズ絵は、私が、「わたし」と、病気も含めて、ともに歩いていきたい、と願いをこめたもの。これからも、前を向いて、私はわたしと手をつないで、前へ進んでいくことができますように…。


うさぎのゆきあと~電動車椅子のパステル画家・ゆきの日々~

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避難先から自宅に帰る途中、近くの千波湖湖畔で、早咲きのピンクの桜が咲いているのを見て、感動しました…!その日、テレビのニュースで、日立の桜が津波に負けず、咲いた、というのを見ました。わたしが千波湖で見た桜と同じ種類かなと思いました。一方で、もう咲くことの出来ない桜もあることを想うと、胸が深く痛みます。今年は、想い増して、それぞれが、桜へと想いを寄せることと想います。

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この絵を見てくれたひとが、ちょっとでも、明日へのひかりを感じてくれたら、私も嬉しいです。私に出来ることはほんの少ししかありませんが、私は画家なので、絵を通して、何かを伝えることができれば、と改めて思います。

今回の地震で被災されたかたがたに心からお見舞い申し上げ、そして、一日も早い復興を願っています。

ここにいる「今」このときに。いつでも、心から感謝します。

いつもありがとう。

*『シリーズ・うさことわたし』(2009年~2010年)はこちら から。