国際私法について語るの【2】です。
こっちのが長めで、司法試験との観点から語ってます
①覚える量が少ないってマジ?
→たぶんマジ
前でも言いましたけど、国際私法は記憶の絶対量は少ないと思います
他の選択科目ロクにやってない上に知財もおぼろげなんで明確なことは言えないけど、皆言ってるし元試験委員の教授も言ってたしたぶんマジでしょう
ただその条件は国際私法を選択している受験生の全員が同じなんで必ずしも有利とはいえないですし、逆にちょっとサボるだけで相対的に大打撃を受けます。というかたぶんそれ俺です。
また、渉外を多く取り扱うような大手事務所を目指す優秀層も上位には居そうなのでそれほど相対的に楽なのかはなんともです。
②他の科目との関係
(1)民事系科目との関係
「実は民事系苦手なんだけど大丈夫かな?」という懸念もあるかと思います。
苦手の度合いにもよるけど、基本的には大丈夫だと思います。
民法・民訴の用語の意味がわからないレベルだとさすがにきついかなと思うけど、そもそも民法・民訴1周してる段階でも国私に出てくる民法・民訴の用語で手こずるレベルは…申し訳ないがさすがにシャレにならないほど民法・民訴の実力がヤバイと思う。民法・民訴でFとったことのある俺が言うんだから間違いない…ウッ…古傷が…
それで何故大丈夫かと言いますと国際私法でやることは基本的には、渉外的法律関係においてどこの国の法律が適用されるのかという話だからです。
もちろん設問では具体的に適用した結果を書かないといけない場合もかなりありますが…ほぼ確実にその場で条文見りゃわかります(ただし適用した後でさらに国際私法固有の論点が出る場合もあります)。
そんなわけで民法などの実質法について知識がなかったり、理解不足な点があったとしてもそれが司法試験での国際私法の能力・成績に直結することはありません。
ちなみに現場では「甲国民法~」みたいな架空の外国の法律が日本語で資料として添付されてますので外国法が適用される場合はそれを使います。日本法が適用される場合はその場で民法を引く感じになります。
知り合いの合格者で「むしろ民法苦手だから国際私法を勉強するのが民法の勉強になった~(/・ω・)/」と言ってる方も居ました。
個人的には「若干盛ってるだろお前('Д')」と思いました。
もちろん完全に嘘ではないと思います。やっていくうちに民法の言葉が何回もよぎるので民法な気持ちになったり、人によっては民法の復習の契機にもなります(たぶんこの合格者はそれ)。
しかし、さすがに国際私法をだけをいくら勉強しても民法の本試験に耐えうるレベルの能力は絶対に身につかないでしょう…
とはいえ民法の勉強にプラスになる瞬間はもちろんあると思います。
だいたいの人に主に期待できる効用としては民法短答の家族法分野です。
選択科目は全科目がそれぞれ配点50点の第1問、第2問に分かれています。
他の7科目と違って解答用紙も4頁×2で分かれています。
そして、国際私法は国際家族法が第1問、国際財産法が第2問で出てきます。
そうすると、家族法分野に触れることが他の科目の選択者より相対的に多くなります。
「養子」やら「認知」やらは他の科目の選択者も最低限、短答知識として覚えているでしょう。一方、国際私法選択者は日本の民法という形では触れることはあまりないにしても、「養子」「認知」というワードにはかなり頻繁に触れることになります。
そうすると他の科目の選択者より民法の短答知識の勉強をしているときに、多少入ってきやすくなる…そんな効用があると思います!!
実際、自分が実感したのはこれくらいですね。
「養子」「認知」分野自体って重要っちゃ重要でも他の科目の選択者的には司法試験全体の中では微妙ってのがほとんどかと思いますが、国際私法選択者からするとヘタすると1科目の半分くらい持ってかれる恐れのある分野として勉強してます(再三言いますが国際私法の選択者は日本民法の知識として学んでるわけじゃないです。渉外的に「養子」「認知」が出てきたときに通則法を使ってどこの国の法を準拠法にするかを学んでます)。
となると、民法の短答やってる時にもちょっとピクッとなる度が変わってきます。
「そんくらいかよ!?(;゚Д゚)」と言われる方も居ると思います
「そんくらいだよ!!('Д')」としか返せないです
(2)刑法との関係
「なんでここに刑法が!?」と思った方も居ると思います。
ぶっちゃけ内容に関係は全くないです。
ただし、国際私法は処理の仕方がかなり体系的にカッチリしています。
絶対的に守らないといけないのが①法性決定→②連結点の確定→③準拠法の特定→④準拠法の適用という体系です。
テクニカルタームの説明をちょいちょい入れるのはクドいですし、そろそろもうめんどいんで避けますが刑法でいえばこれを守らないのは①構成要件該当性(客観→主観)→②違法性阻却事由→③責任の体系を無視するレベルです。
非常にキラヤバな感じです。
他にも通則法の条文同士でもどこの条文を先に検討するべきか細かく処理の手順が実は決まっています。
そんなわけで体系上の論じる順番がカッチリ固まっている刑法が得意な人の方が若干向いているかなと思った次第です。
まぁ感じ方に個人差はあると思うし「いやいや刑法よりカッチリ論じる順番固まってるのあるわ!」って反論ある人もいるかもですが「そうかもですね」としか言えないです。これはまあちょっとだいぶ俺の主観入ってますので…
③趣旨
ところで他の科目で条文の趣旨っていちいち論じますか?
「全て答案で論じるわけではありません。しかし、文言に不明確な点があるなど法解釈が必要な際にはその条文の趣旨を論じて、条文の解釈を展開する必要があると思います。」と思った方~
合格ゥゥゥゥ!
俺が試験委員だったらもう合格でいいです。よーしよしよしよし×∞です。角砂糖を5個あげるんで口でうまくキャッチしてください!
そう。他の科目だったらそれでいいはずなんです(たぶん)
しかし、国際私法はちょっとそこが他の科目とは違います。通則法を答案で出した際は、なんでその通則法の条文がその国の法を準拠法に指定しているのかの趣旨をキッチリ書きます。全部です。
理由は採点がそういう方針をとっているようだからとしか言えないです(例えばH27採点実感とかには「個々の法規範の趣旨を理解しているか」を採点の基準にしていると明言してます)。
ちなみに自分の場合はローの教授・合格者から書けと言われましたし、予備校の講座でも書けと言われました。
というわけで国際私法では特に通則法の趣旨は全部書きましょう。
忘れちゃっても現場ででっち上げでも書きましょう!
④最近の難化傾向
「え~国際私法~?簡単だしまぁ通則法の条文テキトーにあてはめればそれっぽい答案は書けるしやっぱ7科目優先でしょ~」
こんな受験生たちの声が試験委員の耳に入ってしまったのだろうか…
H28以降、明らかに国際私法は難化してます。
(なお実力ナイナイのぼくが国際私法の難化を確信したのはH30頃…「ムズいわ!」と叫び狂うようになったのは令和直前です。上のセリフと同趣旨の発言をH29頃にしてます。爆死しました)
特に第1問、国際家族法分野での難化が著しいです。
第2問は全体的に難化はそこまでしてないにしてもH29にはモントリオール条約、R元にはベルヌ条約という「いや俺、知財をローでやってる時代に聞いたんですけどソレ!?(;゚Д゚)」な条約も出てます。
ちなみにH30で難化と言われた点は百選2版2番の判例がわかってりゃまあどうにかなるやつらしく、難化と言われるのも試験委員の皆様におかれても心外のようです(H30出題趣旨41頁2、3行目や同採点実感)。
「お前ら百選すらマトモに読んでないんじゃね?」という疑いを我々受験生は試験委員より向けられています。
が!実態としては国際私法で百選の判例をシコシコ潰すというのはマニアしかやんないです(たぶん…いやたぶん)。
理由は色々あるけど、一番大きいのはある程度全体回してないと理解できないような複雑な事例が最初の判例のあたりからゴロゴロしてることと、次いで通則法が施行されたのがH19.1.1で、H24.6に出た百選の解説には大量に通則法の前身である「法例」の条文が載ってて滅茶苦茶読みづらいことかと思います。
そんなわけで百選を潰すマニア合格者は過去2人ほど見たことがありますが、あまり有用な勉強法ではないと思います。
もちろん判例が大事ではないという話ではないですが、まずは全体を理解して答案がそこそこ書けるようになってからのが百選の効率も上がるかと思います。
ちなみに僕は百選ほぼ触れてません。
ローの授業では百選使っていきなり複雑な事例の解説をしていただきましたが無理でした。ていうか寝ました。
教授ゴメン。知財の教授と違ってあなたは好きでしたが催眠術はかけないでほしかった…
なお難化といっても「え~じゃあ国私選択だと合格も難しくなっちゃうの~」という話ではないと思います。
難化の影響は国私選択者全員が受けるし、他の選択科目との調整もされるからです。
なので難化に備え過ぎて変な方向の勉強をするのは気を付けるべきかなと。他の科目にも言えることですけど。
⑤教材、予備校、勉強方法など
最後になりますが選択科目を選択するときに重視する人が多いのはここでしょうね。
教材の充実度や予備校でいい講座があるか。
これを決定的な要素とする人が多い印象です。では、国際私法はどうなのか…
第1.教材
1.基本書
(1)「国際関係私法入門」(松岡博編)(有斐閣)
シェア圧倒的!キング松岡!
通称は「松岡本」。うちのローでも指定されました。
国際私法の芦部本。ていうか芦部本も今は急速に読む人減ってるとも聞くし割合で考えると芦部越えてるんじゃないのと本気で思ってる。
予備校の講座をとらない限りはほぼ絶対に皆読んできてると思います。
読んでないと昔の俺になります。
俺も2回くらいはさすがに通読しました。アガルートの講座とれば不要かもだけど俺は講座受ける前に読んじゃったし、読んでる人かなり多いから読んでないと不安にもなるかなとは思う。
(2)リークエ(中西康、北条安記、横溝大、林貴美)(有斐閣)
松岡には勝てない…
ちなみに寝かせてます。よほど調べもののある時に読むくらい。たぶん通読してもいいとは思うんだけど松岡読んだし…
めっちゃ国私で点とる人が読んでるイメージ。
予備校の講座とれば不要だと、かなり強めに思います。
ぶっちゃけ基本書はこれくらいしかない
いやまあ他もあるっちゃあるけど俺は持ってないし、ないってことでいいと
2.予備校本
「一冊だけで国際私法」(辰巳法律研究所)
辰巳選択科目1冊本シリーズ
正直どうしようもなくドン詰まりな人の駆け込み寺のイメージ。
趣旨規範本と辰巳が出してる各科目ごとのH18~H26の過去問解説本がくっついてる感じ。
ようは過去問解説のついた趣旨規範本なわけだから自分でカスタマイズして使うやつなんだけど、選択科目は手薄になる人が多くてこの趣旨規範をひたすら詰めてごまかそうとする人が居るというイメージです…
すんませんH29くらいの俺の話でした…ドゥフッ( ;∀;)
まあでも俺以外にもそれなりの人数居るのを確認しているんで…
趣旨規範本としての利用は有用だとは思いますが、これ1本で行こうとするのはマジで止めた方がいいと思います(まあ他の科目でも趣旨規範本1本で行く奴なんて居ないだろうしそんなの居ないとは思うけど…)
3.演習書
「ケーススタディー国際関係私法」(野村美明、高杉直、久保田隆 編)(有斐閣)
マジメに演習書やるならこれか50のやつ(50の持ってないから詳細知らん)(追記、30の間違い)
Bexaの講座で指定された。
だけど寝かせた。やってない。
たぶん有用。
他?ないよ(たぶん)
そんな感じで教材はあまり充実していないのが実情ですが、やることは圧倒的な王道がある分迷いにくいと思います。
第2.予備校講座
予備校講座については2つやりました。
(1)アガルートの講座と(2)Bexaの講座です。
(翌日追記、他の予備校講座はそもそも存在してるのか?って感じでしたがレックやわせみ、それどころか塾長講座までありました。マジで知らんかったてですごめんなさい)
アガルートは少々Bexaよりお高いですが独自のテキストで過去問フル扱います。最新改正法対応です。
Bexaはお安いです。松岡本を潰していきます。過去問は俺が受けた時は3年分だった。フルでとってると「ケーススタディー国際関係私法」もやります(俺は講座とってサボった)。
ちなみに【1】のAfterの成績はBexaの講座で松岡本を潰した段階です(この上、完璧を期したかったのでさらにアガルートもやりました)。
第3.勉強法
予備校講座聞く!テキスト回す!過去問書く!添削する!書けなかったところのテキストを読む!以上だ!(本当)
ーまとめー
こっちが試験との関係で国際私法を語っちゃう企画です。
やっぱこっちのが内容多くなったなぁ…
ちなみに、国際私法国際私法言ってますけど正式には「国際関係法(私法系)」です。
選択科目の確定は前年の11月下旬~12月上旬の出願時の願書にマークすることで確定します。ここでマークミスをしていないかどうかは翌年4月中旬の受験票が届くことで確定しますので、毎年受験票が来るまでちょっとドキドキです…
会場も選択科目で決まるので、どこの会場かは同じ選択科目の先輩に聞いてみてもいいかもですね。今年はいつも有明だった国際私法は日本橋になりました。
2記事に渡りましたが、こんなよくわからん長文にお付き合いいただきありがとうございました!m(__)m