じゃあ今回はシカゴ音響派、トータス系列の辺りをまとめていきます。講義みたいな言い方ですね。
トータス系列って言うからには、トータスってバンドが総本山的な位置にあるわけです。
Tortoiseです。陸亀ですね。シンプルです。Mogwaiといい(同じくポストロックに括られるバンドです)。ちょっとふざけてますよね。いいと思います。
どんなバンドかって言うと、まず一つ言えるのがプロツールスっていう、つまりパソコンで音楽を編集する技術を大胆に取り入れたところ。
もちろん今じゃそんなのは当たり前なんですけれども、当時は全然当たり前じゃありません。
今の感覚で言うと「このバンドのメンバーは全員AI(人工知能)なのだ!」っていうくらい奇抜なもの、それは言い過ぎかもしれませんけど、そのくらい新しいことでした。
テープで録音してた時代からすると、ほんとに自由で目の前に急に未開の地が広がったような感じだったみたいです。トータスのメンバーはそりゃもう物凄く楽しくなってしまって、変なこといっぱいしちゃってる訳です。
音を切ったり貼ったり、右に降ったり左に降ったり、人が叩けないようなリズムを作り出したり(ライブではドラムセット二台で演奏してたりもします)。
まあでも、そういうの今じゃ当たり前なんですけど。
このアルバムを聴いてもらうと、いかに本人たちが楽しんでたのかわかります。
とまあここまでは基本知識みたいなもの、ここからは個人的に思うこのバンドの魅力を書きます。
さっきも書いたように、やっぱりこのバンドで使われている「パソコンを使った最先端の音楽編集技術」なんてところに着目したところで、なんにも楽しくないんです。現代じゃ当たり前なので。じゃあもっと突っ込んで、このバンドの何が魅力なのかというと、まず映画のような楽曲構成かなと思います。
聴いてもらうとわかるんですが、展開が多くあるわけではなく、ゆったりと変化していく、一日の流れを観察してるような楽曲が多い。
こういう所は現代音楽の中の「ミニマル」というジャンル…テイリー・ライリーやスティーブ・ライヒやフィリップ・グラスが大御所の作曲家なんですけど、簡単にいうと「小さな繰り返し」があって、その繰り返しが変化していく流れで楽曲を組み立てるといった方法を追求した人たちの影響があるわけです。
で、そのミニマルをロックに持ってきたというところがトータスの面白さ。
現代音楽の世界と違って、ポップカルチャーなので情景描写やリズム、遊び心のある展開があります(対して現代音楽はどこまでもピュア)。
そしてそのミニマルを受け入れてきくと、そうです、せっかちなみなさん、受け入れないと退屈です、とにかく受け入れると音楽に時間を委ねる気持ちよさに気がつくわけです。自然をゆっくりと眺めているような、少し前に書いたように一日の流れを観察してる感覚。
ちなみに自分はゆっくり日が落ちていく時間にドライブをしながら、あるいは散歩しながらアルバム「TNT」を聴くのがお気に入り。
あともう一つ、曲の一体感。バンドのメンバーはジャズ畑の人たちだったようで、その世界では希薄だった「アンサンブル」の要素をロックの中に見出して大事にしているようです。
全体が重なって一つの大きな波を動かしている、グルーヴってやつですね。これが、音を切って貼ってしてるくせにすごく有機的なんです。ノレます。
以前ビルボードライブでトータスを見たことがあるんですが、なんで座ってなあかんねんチキショーと思ったくらいグルーヴィでした。
緻密に計算し構築されているようでいながら、あくまで自然なアンサンブルであるというのが不思議な感覚です。とっ散らかってるようでいて、不自然に浮いた音が見当たらない。
ツェッペリンなんかに通ずるところがありますよね。
トータスは色んな側面を持っている、というかあらゆる音楽を吸収したようなところがあるので、言葉では簡単に表現しきれない部分がたくさんあります。
表面的に軽く聞いたんじゃ、「なんだか退屈な音楽だなあ」でおしまいになりそうですけど、ちゃんと聴いてみると表情豊かで繊細で…音楽の懐の広さを感じることができます。
てわけで、聞いたことない方はきいてみてください。
ここまで書いて疲れてきたので今回はこのくらいに…、気が向いたら追記で色々書いてくかもしれませんけど。
次回はトータスに関連するバンドを広く浅く紹介していこうかなと思います。ディスクガイドみたいな感覚で読んでくれたらと思います。よろしくです。
あとバンドで曲を作ってるんですけど、ポストロックとか興味ある人は気に入ってくれるかもしれないんで良かったら聴いてみてください。