彼が遠い街へと飛び立ってから、一年以上の月日が流れていました。
でも、私の心に灯った鳳凰の火は、消えるどころか静かに燃え続けていたのです。
私は一度だけ、彼が住む街へと向かいました。
再会した彼は、私を彼のお気に入りの場所、岩盤浴へと連れて行ってくれました。
私にとっては、初岩盤浴。
本来なら、好きな人の前で汗だくのノーメイク姿になるなんて、抵抗があって当然かもしれません。でも、14歳の頃からお互いを知っている私たちにとって、それは不思議と、鎧を脱ぎ捨てるような心地よい解放感でした。
「仕事に煮詰まった時、ここでリセットするんだ」
そう話す彼の横顔を見ながら、私は彼と同じ景色を共有できる喜びを感じていました。この日以来、岩盤浴は私にとっても、自分をリセットするための大切な「聖域」になったのです。
そして帰る時間になり、駅で彼と別れた瞬間。
今まで感じたことのないほどの、冷たくて深い「不安」と「淋しさ」が、一気に私を飲み込みました。
新幹線に揺られながら、私は気づいてしまったのです。
彼には、守るべき日常と、帰るべき場所がある。
どんなに魂が共鳴しても、この淋しさは決して埋まることはないのだと。
複雑な心境で帰路につく頃、私の心は不思議なほど静かでした。
「また会いに行こう」という熱い想いは、もうどこにもありませんでした。
彼と結ばれたことは、私にとって「過去の未練への決別」であり、同時に「不倫という闇」の深さを知るための、避けては通れない通過点だったのかもしれません。
鳳凰が教えてくれたのは、恋の喜びだけではなく、**「私が本当に手に入れたい幸せは、これではない」**という、切なくも確かな答えでした。
