【あらすじ】

 

グラスホッパー、マリアビートルに続く殺し屋シリーズ第3弾。度を越えた恐妻家であり、超一流の殺し屋「兜」の物語。

裏稼業を引退したい兜は、愛する家族に気付かれないよう、ひっそりと奮闘する。

 

 【ネタバレあらすじ】

 

業界では名の知れた殺し屋「兜」は極度の恐妻家。

息子の誕生を機に足を洗いたいと考え始めるが、引退するには大金が必要とされ、その資金を稼ぐため渋々殺しを繰り返す。

仲介業者の「医者」から、引退できるほどの報酬を約束された仕事のターゲットは、唯一のパパ友「奈野村」だった。そこで明かされる奈野村の正体もまた、引退したいと考える凄腕の殺し屋であった。

同業者として親として、奈野村の気持ちに強く共感する兜は、仕事(奈野村殺し)を放棄しその場を去る。

後日、再び兜の前に現れた奈野村は、医者により兜を殺さなければ自分の一人息子が危ない状況に追い込まれていた。兜を殺したくない、これ以上殺人を重ねたくない奈野村の葛藤が痛いほどわかる兜は、自ら死ぬことを申し出る。

 

~数年後~

成人した兜の一人息子「克己」は、父の自殺に疑問を持っていた。根拠は、異常なほど母の機嫌を伺いながら生活していた父が、その母の気分を害するような死に方を選ぶわけがない、である。

遺品から生前の父を辿るうち、医者と関わるようになり、妙なことが起こり始める。不信感がピークに差し掛かる頃、医者の「お父さんは死を怖がっていた」という言葉で、自殺じゃなかったと確信する。なぜなら父がこの世で怖がっていたものはただひとつ、母だったからだ。

 

 【感想ネタバレ含みます】

 

ガタイが良く強面イメージの兜が、緊迫感を漂わせながら妻の一挙手一投足を見守り、想定し得る限りの反応に対応する姿を、至極真面目に語る様子がツボでした。

奈野村が何年もかけて兜に恩返しをするハッピーエンドの結末も好きです。