賤機帯-歌詞- | 『花のほかには』-fuyusun'sワールド-

『花のほかには』-fuyusun'sワールド-

fuyusunの『何じゃこりゃ!長唄ご紹介レポート』
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名にし吾妻の角田川。その武蔵野と下総の、眺め隔てぬ春の色、桜に浮かぶ富士の雪、

柳に沈む筑波山、紫匂ふ八重霞、錦をここに都鳥、古跡の渡なるらん。

春も来る、空も霞の滝の糸、乱れて名をや流すらん。

笹の小笹の風厭ひ、花と愛でたる垂髫子が、人商人にさそはれて、行方いづくと白木綿の、神に祈りの道たづね。

浮きてただよふ根岸の船の、これがこれがていざ言問はん、我が思ひ子の。

有りや無しやと狂乱の、正体なきこそあやなけれ

「船人是を見るよりも、好い慰みと戯れの、気違ひよ、気ちがひよと、手を打ちたたき囃すにぞ」

「狂女は聞いて振返り、ああ気違ひとは曲もや」

物に狂ふは我ばかりかは、鐘に桜の物狂ひ、嵐に波の物ぐるひ、菜種に蝶の物ぐるひ。

三つの模様を縫ひにして、いとし我子に着せばやな、子を綾瀬川名にも似ず、心関屋の里ばなれ。

縁の橋場の土手伝ひ、往きつ戻りつ此処彼此処、尋ねる我子はいづ。くぞや、教えてたべと夕汐に。

「船主なほも拍子にかかり。それ其の持つたるすくひ網に、面白う花を掬ひなば、恋しと思う其人の、在処を教え参らせん」

「なに、面白う花をすくへとか。いでいで花を掬はん」

あら心なの川風やな、人の思ひも白浪に、散り浮く花を、掬ひ集めん、心してふけ、川風。

沖のかもめの、ちりやちりちり、むらむらぱっと、ぱっと乱るる、黒髪も、取りあげて結ふ人もなし。

「船長今は気の毒さ、何がなしほにと立ち上がり」

そもさても、和御寮は、誰人の子なれば。何程の子なれば。尋ねさまよふ其の姿、見る目も憂しと、諫むれば。

音頭音頭と戯れの、鼓の調べ引締めて、鞨鼓を打って見せうよ。

面白の春の景色や、筆にもいかで尽さん、霞の間には樺桜、雲と見えしは三吉野の、吉野の川り滝津瀬や。

風に乱るる糸桜、いとし可愛の児桜、したひ重ねし八重桜、一重桜の花の宴、いとしらし。

千里も薫る梅若や、恵みを仰ぐ神風は、今日ぞ日吉の祭御神楽、君が代を、久しかれとぞ祝ふ氏人