税理士の勉強を開始したというのは、一つ理由がありました。当時設立したてのうちの会社では資本金1000万円以下の消費税免税制度を利用していたのにも関わらず、すっかり課税売上高が1,000万円を超えてしまっていたため、消費税について対策が必要になったからです。

顧問の税理士さんは優秀な方なので間違いなく計算してくれると思っていたのですが、仕組みもよくわからずに会社の財務を預かるのはよろしくないと思い、少々オーバーだったかもしれませんが税理士試験の消費税法を勉強していました。その時のエピソードを書きたいと思います。

うちの会社はCDの製造と販売をやっていますので、在庫としてCDが大量にあります。それこそ資産のうちほとんどは棚卸在庫です。CDのプレス製造は外注でできてしまいますし、制作に必要な固定資産と呼べるようなものは特にありません(強いて言えば性能が高いPC、ワークステーション、そして音響用機材の一部が20万円を超えていますが)。会計上は固定資産のようなものでも、トリニティアのように小さな会社ですと税法仕訳しか切らないので、別表4での調整もなしに、すべてそのような機材を費用化しながら計上しました。

そんな会社が課税業者になったり免税業者になったりというボーダーラインすれすれの売上高で頑張っている時期では、会計期間の設定と、棚卸在庫についての戦略が求められていました。あまり会計士試験では問われたことがありませんが、免税期間に係るたな卸資産を課税期間に持ち越したり、逆の事をすると消費税の控除対象消費税額の加減算が必要になります。この加減算がうちの会社の場合バカにならないのです。

もし消費税について何も考えなしに会社を運営していたら、例えば課税期間に仕入れた在庫を500万円、これを免税期間に持ち込むと、その期の前の消費税額が20万円ほど高くなってしまう計算になります。

税理士さんはこの特例について知っていますし、税額が増えたり減ったりすることを知っては居ますが、我々の経営にあーしろこーしろとはあまり言わないものですから、自衛するしかなかったのです。でも結果的に勉強していたために、たな卸資産について不要な在庫かつ仕入価額が高いものを順次処分除去していき、消費税を十万円以上節税することができました。

十万円と聞くと大したことないのですが、税理士試験代金が数千円と考えると、元は取れてるなあと感じました。この時、経営に会計や税務の知識は大きく貢献できると感じました。

税理士試験自体は、消費税法は大変の難関でして、それこそ消費税法の条文を全て丸暗記しないとパスできないような状況です。私は暗記がさほど得意ではないほうでして、ベタ暗記のほうが有利で、あまり思考能力は問われない税理士試験は合わないなと当時感じていました。(法人税法等、現在は思考能力重視の問題が多いですが)

2009年の8月の末、税理士試験の手応えは全くなくどうしようかなと思って悩みながらTACの相談窓口で相談しました。どの科目からやるべきか等をお話ししていたのですが、その時横にちらっと見えたのは大量合格実績がデカデカと書いてある公認会計士のパンフレットでした。「これはどういう試験ですか?」と聞いてみました。税理士試験を最初選んだのも、会計士試験は専念型が基本で若い人がうけるものだと聞いていたので、一回就職した後だと税理士試験が普通だと勝手に思い込んでいたからです。

試験制度を聞き、どうやらベタ暗記じゃなくて良いようだということだったので、頭を巡らす問題がでる試験なら頑張れるかなと思い、周りの友達や家族に相談して、会計士試験にチャレンジすることを決めました。2009年の9月から夜に講義がある日程で通学でやってみることにして…会社と両立させる道を覚悟してみました。

最初に税理士試験で失敗したなあと思ったのは簿記論、財務諸表論から入らなかったことでしょうか……いきなり難関の消費税法から入ったのは簿記的なセンスを得るという意味でもあまり良いものではなかったです。結果的に2009年の税理士試験はC判定で落ちてしまいました。

【私の職歴】⑦ TAC通学時代 に続きます


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