今宵の気温は12℃。
街にはハロウィンで仮装した人、人、人。
人混みに酔いそうになりながらも肩を左右に交わしながら前進する。
兎の耳と尻尾をつけたバービー姿の
60歳とおぼしき女性が目の前に立ちはだかる。
年相応の二の腕、太ももの弛み。
小学生の時にトラウマになったおばあちゃんの生着替えを思い出すそのそっくりな、おへそにつきそうなくらい垂れた豊かな胸にポッチ。軽い公然猥褻（わいせつ）だ。
すると僕に
「トリックオアトリート！」
といって詰め寄って来た。
トリックオアトリートとは
「お菓子をくれなきゃ、いたずらしちゃうぞ！」という意味だとつい最近知り、子どもではなく、まさかのバービー姿のおばちゃんによって脅されるとは。
とっさにズボンのポッケに入っていた、僕の太もものぬくもりでダラけた板状のグレープ味のガムを渡した。
その後電車に乗り吊革を握りしめながら、先ほどあった一部始終を頭の中で咀嚼する。
電車の中には特殊メイクを施した
ゾンビや、血だらけのナースがいるがそれよりもよっぽどインパクトが強く、電車に揺られる度に頭の中でフラッシュバックされる。
今日がハロウィンというだけで
日常では起こりえない人物同士の
コラボレーション、電車の中の異様な光景になんとも思わなくなった人間界。
ハッとし停車駅を見ると、僕の降りる駅。そんな感じで僕のハロウィンはバービー姿のおばちゃんで頭がいっぱいだ。
ハッピーハロウィン
青峰佑樹☆彡