その日、とある宇宙のステーションのホームに少年らしき子供がやってきた。

惑星ポルックへ停車する宇宙船を待っていたのだ。

とても大きな青い目をしていた。そしてながいまつ毛。

まるで絵本の童話の銀河鉄道の夜に登場しそうな顔立ちだった。

その子供は片手に少年の身長ほどもあるススキのような枝をひとつ持っていた。

駅のホームの係員がそれに気づき、念のため電車に持ち込んでも支障がないか確認するため子供に話しかけた。

「それは何に使うの?」

子供は答えた。

「保湿のためだよ。僕たちにはいつも水分が必要なんだ。故郷ではいつも水滴の中で寝ているから」

係員は微笑んで車内に持ち込むことを了承した。
ホームにはいろいろな宇宙に住む存在達がやってくるので、ささいな確認も必要なのだった。

その少年は安心して到着した宇宙船に乗り込んだ。
彼は故郷へ帰る旅路へ向かった。

船内では同じ水に関係する宇宙人の種族の近くに坐った。見知らぬ自分の親世代の宇宙人たちに故郷までの旅を見守って欲しかったのだ。まだまだ子供であったので、そうすることにより安心してホッと一息つけた。
彼の姿は我々地球人から見ると、半身半霊、3.5次元に住んでいるかのように少し透き通って見えた。
宇宙船の中はあらゆる宇宙人の体質、構造、身体の皮膚に対応していたので、その少年が少し水に濡れているようなことがあっても、他の乗客の迷惑にはならなかった。
そして8時間ほどかけて故郷の駅へ到着した。
その惑星の時間では早朝の時間帯であった。

故郷の星はとても大きかった。地球の数倍はあった。そしてあらゆる自然が巨大であった。

朝露がくっついている緑の雑草のような植物達も巨大であった。

少年は適当な朝露を見つけると、その中に入り込んだ。

いつもは夜露の中で寝るのだが、今日は朝露の中で眠ることにしたのだ。

長い旅であまりにも疲れていたので、ぐっすりと眠れそうだ。

日の出が見られる時間ではあったが、生い茂る植物達の葉が彼の眠る朝露を隠していた。

昼になっても少年は夢の中であった。

空からの優しい日差しが長く伸びる植物達を照らしていた。

その植物達の下には少年の眠る水滴があった。

暖かくなって水滴が無くなるまで少年は眠り続けた。