姪から孫へのプレゼントだったホウネンエビセットが育たなかったので、かわりに近所の田圃から成虫を採ってきて、そのセットの水槽にいれてから、一週間たつが、依然、彼らは6匹とも元気である。

 窓際に置いてあって日の光を浴びている。中にメダカ用にホームセンターから買ってきた水草を入れてある。水草が光合成するると、ぷくぷくと泡も出る。水草は、メダカの鉢にしばらくあったもので、トロトロとして藻がまとわりついていた。それをそのまま持ってきて入れてある。ホウネンエビは水中にいる植物性プランクトンを食べるので、その色素をもらうからか、波打つ無数の足が緑色で美しい。この藻の生えた水はそのままホウネンエビのお菓子の家だ。つまり彼らはヘンゼルとグレーテルだ。しかし僕は彼らを殺して食べるつもりはない。

 

 この中は閉じた一つの生態系になっている。餌をやるでもなく、ずっと元気に泳ぎまわっている。

 

 

 

 

  ホウネンエビと姿かたちがそっくりのブラインシュリンプという生物がある。熱帯魚の餌として卵が売られている。ホウネンエビそっくりだがこれは海水で飼う。むかし、これをシーモンキーと呼んで、子供向けの玩具?のように売られていた。猿には似ていない。シュリンプ(エビ)と言われても納得はいかない。むしろゲジゲジのようだ。

 

 

 

 小5のときに同じクラスになった杉本君の(おおい杉本君今どうしているかい)家の前の果樹棚のようなところの脇の机の上に水槽があって、見事にうようよろシーモンキーが飼われていた。僕は初めてうわさに聞くシーモンキーを見た。杉本君は言った。

 

  ーーーお父さんが誰かからもろうてきて、この水槽に海藻といっしょに飼いよった。そのうち全滅して、ずーっとただの海藻の汚い水槽になって長い間おいてあった。ある日、よう見たらこうなっとった。餌もなにもやってない。

 

 そうなとったんかいな。すごいじゃないすか。うようよと、水の中のゲジゲジは縦横無尽に泳ぎまわっていて、素晴らしいと僕は感動した。きっとあの放置された閉空間の水槽に、知らぬ間に生態系が仕上がって、シーモンキーの天国がそこに現出したのだろう。

 

  ということを、僕の部屋(ささやかな書斎)の日の入る窓際で生きている水草と緑藻と法然上人をみながら思い出した。