ちょっと前まで毎日雨が降りジメジメとした天候に嫌気がさしていた。しかし梅雨なんか早く終われと思って実際終わってみると毎日気温38度の灼熱地獄。
今年も来てしまった夏
暑い夏の日
「やってられなーい。」
ひんやり冷たい床にほっぺたをつけて寝ころぶ。最初は冷たくて気持ち良くても、汗と上昇する体温ですぐに床がベタベタになってしまう。
「まじこんな日に稽古つけられても無理だよ無理無理」
「つけられてんじゃなくてつけてんだろー。」
ふすまを開けて外に出てきた男に、暑さのあまり視線すらも送らない。
「おまえこんなとこで寝てっと土方さんに殺されますぜィ」
「それあんたに言われても全然説得力ないんだけど。」
いつも私より悪事を働いてる総悟に言われたくない。
「おいこらてめぇ。道場にいねぇと思ったらこんなとこにいたのか」
「あ」
髪の毛の黒い怖い顔をした男と目が合う。
「あじゃねえよ。おまえ俺のことみてその反応ってなめてんのか。」
私はムクっと起きあがって頭を掻いた。
「毎年こう蒸し暑いのになんで道場に冷房おかないかなぁ。経費でなんとかなんないの?」
「りな、それは無理でサァ。土方さんみたいな無能な奴が上の奴から余計な金もらえるわけがねぇ。」
「あっそうか」
そう言った矢先プルプルと震える拳を見せつけられる。
「おまえらいい加減にしないと」
怒鳴られるが先か私と総悟はそそくさとその場を走り去った。
「おいこらてめぇら!!待て!!」
私は近藤りな。近藤さんの従兄の養子。つまり一切私と近藤さんは血のつながりのない親戚である。
そんなわけだが小さい頃から道場に通っていた好でずっと一緒に過ごしる。江戸に上京するとなった時もこそこそと後ろをついてきてしまうほどだ。今は真選組の1番隊補佐役をしている。
「あー逃げ切ったー。また無駄な汗かいちゃったよ。」
そう言って私は汗を袖でぬぐった。何時の間にか私を抜かして先を逃げていた総悟も疲れたのか大きくため息をついた。
前を走る総悟と手を繋いでいたことも今分かりハッと思って総悟の手を離す。
「暑すぎておかしくなりそうでサァ。」
そういいながら橋を渡り、川の畔まで歩いてくると草履を脱いで、わたしは水に足を入れながら座った。
「つめたーい!総悟気持ちいよ!」
「ガキか」
テンションの高い私とは反対に総悟は河原で寝転び出す。いつもと変わらない景色だ。
「大人ぶってんじゃねぇよ総悟!!ほんとは遊びたいくせにー!」
いくら叫んでも反応がないのに少しイラっとくる。
でも私は総悟のそんなところも含めて大好きだった。口は悪いし普段化粧もしなければ隊服と練習着しか来ていない私に興味がない事は知っていた。だから一緒にいられればそれで十分と思っていたけど。少なくともみんなの側にいたくて努力は積み重ねて来たつもりだ。
「なーんだ。つまんないの」
少しムッとした顔をしてから足をぶらぶらと水の中で遊ばせる。
「りな。お前、最近攘夷志士の隠密行動一人で追いかけたらしいじゃねぇか。」
そうそれはつい一昨日パトロール中にたまたま攘夷浪士が密会をしていたところに出くわした。後を追いかけて、密会現場で十人の攘夷浪士を倒し、その後情報を手に入れることに成功したのだ。
まぁ土方さんには無理をするなと言われたけど、目の前での大チャンスに私は黙ってはいられなかった。
「あー。まぁ、たまたま会ったからここで捕まえれたらお手柄って思ってね!実際ちょろかったし」
「山崎がいるってのになんでそんな無理するんでィ。単独行動は危険が多いのはお前もよくわかってるだろィ。」
「大丈夫でしょ。それに危険を恐れてたら何も得られないよ」
「本当に強い奴ってのは自分の力量がわかった上で行動出来るもんでサァ」
「何それ!まるで私が弱いみたいな言い方じゃない!!」
その一言には何も返事をしてくれない総悟。
「俺はお前が不安なだけでィ。」
「何言ってんのよ!総悟らしくないな。なんかあるわけ無いでしょ?剣の筋は総悟の次って言われてるんだからね」
「関係ねぇ。どんなに理由つけようとお前は女だ。邪魔なんでィ。」
「はっ?」
総悟の一言にカチンとくるのがはやいか
「 うぉー!!」
避けるのが早いか、私の顔に翳りが見えた瞬間だった。瞬時にその場を避けると総悟も駆け寄ってくる
「なになに!どうしたこれ?」
「真選組1番隊近藤りな!仲間の仇!ここで成敗する」
そういうと男は刀を振り回しながら私に襲いかかって来た。
私はいつもの容量で刀を抜こうとすると、目の前に総悟が立ちはだかり、わたしよりも先にその男を切った。
「総悟!」
「大丈夫ですかィ?!」
総悟は血相を変えて私の肩を揺すった。総悟こんなに焦っているところを見たことがない。
「助けてくれなくても平気だったのに」
呆れた顔をして私が答える。刀をしまった総悟は少し冷静になって顔を歪めた。
「邪魔なんでィ。お前のことが気になって仕方ねぇ。女なんだからもっと静かにしてればいいのに俺たちより危ないことしやがる。」
「邪魔って!!」
私も怒鳴りそうになるが総悟の見たことがない顔に少し冷静になる。
「しょうがねぇだろィ?お前のことが好きだから、守らねぇとって思うと気が散るんでサァ。」
「えっ......?」
信じられないと思った。沈黙の時間が続き、総悟に優しく抱きしめられる。
「総悟」
動揺を隠せず顔が赤くなる。鼓動が早くなる。
「今なんて、、、?」
「何回もいわねぇよ。」
いつもと少し違う照れた顔した総悟はそのまま私に背を向けて川沿いの道の方へ歩いて行ってしまう。
暑いからか汗が吹き出る様に額を流れ落ちる。
「待って総悟!」
居ても立ってもいられなくなった私は総悟の後ろを追いかけて手を掴んだ。
「私も好き。」
驚いた顔をして振り向いた総悟に小さく笑いかけた。
「ずっと前から大好きだった。」
総悟はそれを聞くとニヤッと笑って抱きしめてきた。
ーーーー。
「ただいまー。」
そっと屯所の玄関を開けて足音立てずに自分の部屋に戻ろうとした。まだみんな稽古中らしく道場の方から声が聞こえた。
「おい」
その低い声に背中が震え上がった。
私の首根っこを掴むと声の主の方へクルッと向きを変えられた。
「りなー。よくノコノコと帰ってきたな。殺されてぇのか?」
目の前に顔がある土方さんからは殺気がムンムン出ていることがわかった。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。」
「ごめんなさいで済めば警察はいらねぇんだ!ふざけたことばっかやってっと警察呼ぶぞオラッ!」
「副長警察ここです。」
後ろにいた山崎くんが軽く突っ込む。
「うぉーーー!!!」
突然土方さんが大きな声を出して避ける。
総悟が後ろからバズーカを打ってきた。土方さんがよけた瞬間に私を離した。
「土方さーん。そんな怖いことばっか言ってっと血管詰まってポックリいっちまいますぜィ?」
「今ポックリ行くとこー!!」
土方さんが怒鳴っている間に、総悟は私の手を引いてまた逃げ出した。
「せっかく帰ろうとしたのにー!!」
「あきらめなせェ!俺といる限り今日は無理でィ」
呆れたと思ったがしばらく総悟との逃亡デートも楽しそうだななんて思った私だった。
END