手作り粥
治療中、特に麻酔の後、気分が悪くなったり、ドキドキ動悸がしてきたり。なぜでしょうか。
歯科用局所麻酔薬によるアレルギー(アナフィラキシーショック)は重症で、致死的合併症です。しかしその発生頻度は極めて低いとされています。
またもし起きてしまったら、しばらく様子を見るどころの話ではありません。この場合、2つの可能性が考えられます。
ひとつは極度の不安感、緊張から生まれた交感神経過緊張状態による血管迷走神経反射、もうひとつは、局所麻酔に添加されたアドレナリンの作用によるものです。
不安感、緊張は交感神経の過緊張を生じます。その結果、脈は速くなり、血圧は上昇することになります。
一方、交感神経にはこれに拮抗する働きの副交感神経があります。
副交感神経により、脈、血圧を下げられます。交感神経−副交感神経を自律神経と言います。
自律神経の相反する作用は心臓に限らず体のバランスを保ちます。
これは山あり谷ありの道を、時速60kmを維持しながら車で走ることに例えることができます。
上り坂ではアクセルを下り坂ではブレーキを踏みながらスピードを一定に保つように走ります。
このアクセルが交感神経、ブレーキが副交感神経です。急な坂を下っているとスピードが出すぎてしまい、急ブレーキをかけた時のことをイメージしてください。
急にスピードが落ちて、ガクンっとくる。
それを体に例えると、緊張が強くてアクセルのはたらきをする交感神経の活動が高まり、それを抑制しようとするブレーキのはたらきをする副交感神経が亢進してガクンッとなる。
体で言えば、脈は遅くなり、血圧は下がり、一過性の脳貧血のような状態になり、気分不良、意識喪失になってしまいます。
したがって、特に処置は必要なく、しばらく経過観察することでよくなってそれでおしまいになります。
先の患者さんのエピソードから、一過性の脳貧血と判断し、しっかり説明しました。実際の抜歯ではその記載されていた局所麻酔薬を使用して、全く問題なく終えることができました。
ドキドキ動悸がするもうひとつの理由は、局所麻酔に添加されたアドレナリンの作用によるものですが、その詳細は次回に譲ることとします。