ベジャール、キリアン、金森穣というとても贅沢なプログラム。
11月6日、7日(於;東京文化会館)両日観た。
古典もそうだが、特にコンテはキャストが変わると別物に見えてくる。今回は東バのソリストの厚さを実感し、どの日のどの作品も楽しめた。
◉金森穣作世界初演「かぐや姫」第1幕
グランドバレエと謳っているように、物語仕立てでわかりやすい。全編ドビッシーだが、この素晴らしい選曲だけで目を閉じていても物語が浮かんできそうだ。
Aキャスト:秋山瑛・柄本弾
Bキャスト:足立真里亜・秋元康臣
どちらもそれぞれのよさがあるが、私の好みはBかなぁ、、とても新鮮な存在感と深い味わいを発揮したかぐや姫と道児だった。
とっても可憐でお転婆だけど、どこか「月の姫」が漂う真里亜さん、そしてこの上なく優しさと包容力を兼ね備えながらも身分差をくっきりとさせ孤独感・寂寥感を纏った康臣さん。
2年後の全幕が今から待ち遠しい。
足立真里亜さんは、今回金森さんのオーディションで、セカンドソリストからの異例の大抜擢でタイトルロールの大役を果たした。
7月のベジャール版ロミオとジュリエット、8月の眠れる森の美女に続く大役。
つぼみが少し開いてきたようだ。これからどんな花を咲かせるのか、かぐや姫の成長と共に楽しみに見守りたい。
◉モーリス・ベジャール「中国の不思議な役人」
バルトークのパントマイム版はもちろん、伝説の寺山修司版・白井晃版の演劇も見逃し、気になっていた作品。
中国の役人役は両日共に大塚卓。
2日目の娘役、池本翔馬の妖艶さと緻密な演技プランが見事で、男性と女性を行き来するその不思議な熱量が充満し舞台上の人たちを巻き込んでいき、大塚卓も次第に狂気を孕み、群舞もくっきりと迫ってきて、素晴らしい仕上がりだったと思う。
組む人の違い、また同じキャストでも日々のちょっとしたことで変わってくる、まさに舞台は生き物だ。
◉イリ・キリアン「ドリーム・タイム」
この作品は両日同キャスト。
シンプルな美術で無音から始まる。
呼吸で合わせていく流れるような美しい踊りが想像力を掻き立ててくれる。
粒ぞろいの質の高いダンサーが揃っているからこそ上演できる作品だと思う。
これらの安心してオススメできる巨匠達の作品は、バレエファンにもたくさん触れて頂いて、コンテンポラリー作品への理解が深まるのを心から願っている。