〜20時30分〜

飲食店がどこも店仕舞いしてて今やっとマックに来てチーズのバーガーを一人で頬張ってるんですけど、

隣の席には中学生くらいの優等生っぽい女子2人組が。

そしてちょっと離れた奥の方には私服の若そうな男女4人組。こちらはお世辞にも品行方正とは言い難い見た目。
チラッと目があったけど目つきが挑戦的で口答えする時のメイを彷彿とさせる。イラっとするw


少しして80代くらいの細いおばあさんが1人、マックセットを持って歩いて来た。

私の席を通り過ぎて、


「あなたたち中学生??」


急に隣の女子2人組になかなかの声量で話しかけた。
突然のことに驚く女子たち。


女子「えっ…いえ、明日から高校生です」


「あなたたち中学生??」


女子いえ、明日から高校生です」


「え?あなたたち中学生??」



あのね、このおばあさん、マスクの位置ずれてんのよ。
それで近づいて大声で唾飛ばしながら「中学生???」なんですよ。

私の席にも唾が飛んできてるんです。


お年寄りの『今時の若いモンは』みたいな文句よく聞きますけど、街中を見ると私の活動時間帯では若者はしっかりマスクしてます。
してないのは老人です。



明日から高校生だっつってんだろがァ!!!



テーブルの上に飛んできた婆のツバを凝視しながら私は心の中でそう叫ぶしかありませんでした。


「あなたたち中g」

JK達は戸惑い、そして少し煙たそうにしながら、まだ残っているポテトもそこそこに席を立ってしまいました。

まぁコロナ怖いよね。仕方ない。


JKが去ったあと、おばあさんが所在なげに辺りを見廻すので『絶対に隣には来ないでください』というオーラを最大出力で放出しながらハンバーガーを食む。オーラを出すことに集中しすぎてもはやハンバーガーの味がわからない。



ネガティヴオーラが届いたのか、おばあさんは私の視界からいなくなりました。

はぁ〜よかった!これで安心して食べられる!!

と思ったのも束の間、



「あなたたちは学生なの?」



あろうことかおばあさんは、目つきが鋭い男女四人組の通路を挟んだ2人席に座り、そう話しかけてました。


おいおい…無視されるに決まってるじゃん…

すぐ知らない人に話しかけるのやめなよ、うちのお母さんみたいだよ…

万が一受け答えがあってもあなたどうせ聞こえないでしょうが…

これだから老人は…

どうしよう、若者たち、殴りかかったりしないでしょうね…

半笑いで「うっぜw」とか言うのかな…まぁ婆さんには聞こえやしないけど聞いてて気持ちいいものじゃないな…


どんどんマズくなるハンバーガーの味。



「え?あなたたちは学生なの?」


四人組のひとりが何か答えている。


「学生でしょ?」


女子の意識的に張った声がこちらまで届いてきました。


女子「障がいを持ってる人たちの手助けをする仕事をしてます」


「あなたたち学生でしょ?」


女子「障がい。障がいを持つ人たちの…」



「東大なの?」



ちょっと吹きそうになったユカおばさん。



女子「いいえ。障がい…」


途中まで言ってからこの女子が取った行動よ。


友達といたテーブルから離れて、

おばあさんが座る狭い2人席に、おばあさんと向き合う形で座り、おばあさんに聞こえるよう大きな声で自分の仕事の説明をし始めました。

それでもおばあさんが何度も「どこ大??」と聞くので、言い方を変えながら何度も説明していました。



この状況、濃厚接触一歩手前だと思うんですが、


見てたらなんか涙出てきちゃったよね。


婆さん無視されなくてよかったねっていうのと、真摯に受け答えする若い女子のしっかりした後ろ姿。


ダメだ、これ、記事の冒頭だけリアルタイムで後半は家で思い出しながら書いてるんですけど、あの背中を思い出すと涙出てくる。


コロナ禍でも、コロナ禍じゃなかったとしてもあの光景は尊い。

今がコロナ禍じゃなかったとして、
100人いたら一体何人が同じようにできるだろう。

私はできない。



努力の甲斐あって、女子の仕事内容はきちんとおばあさんに伝わったよう。

おばあさんはおばあさんで『そんな言葉使っちゃだめよ〜』などと年長者ぶったり、ぎこちない空気は残るものの会話は成立しているようでした。


閉店時間が近づいていたので4人組の誰かが女子に帰ろうと促しました。


婆「あら帰るの?じゃあこれあげるわよ、全部あげる。持っていって!」

女子「いえ、大丈夫です」

婆「食べてもらいたいのよ、いいからあげる!」

女子「あ、じゃあ…ありがとうございます」


4人組が私の前を通って先に店を出たのですが、おばあさんと話していた女子はバーガーまるまる一個(包装紙に包まれたまま)と、ふんだんに余ったポテトを手にしていました。


おばあさんが出て行き、気付けばお客は私一人に。

慌ててお店を出ると、背中を丸めてゆっくり歩くおばあさんの後ろ姿が。

細いなぁ。

おばあさんが手にしているマックのビニール袋にはジュースだけ。


ふと、マックに来たのはバーガーを食べるためじゃなくて、誰か元気な若い子と話したかったんじゃないかと思いました。
だってセットを全部食べられるような身体に見えないし。

ちょっと会話に付き合ってくれたらお礼に食べさせてあげよう、とか思ってたのかもしれないな。


そんな風に想像を巡らせると、

おばあちゃん、さっきは疎ましく思ってごめんね…

などと反省するのでした。


これだから中年(私)は!!!ムキー