羊の休み時間 No.3

平和のために私たちができること

戦争の世紀と呼ばれた20世紀が終わり、21世紀にはさらに進化を遂げた地球になるという淡い期待も虚しく、昨年11月にはパリで大きなテロの事件が起き、ISという不気味な集団の存在が世界中を不安の渦に落とし入れています。

EU統合を成し遂げたヨーロッパも、すでにほころびが目立ち、冷戦によって保たれていた米ソの均衡も破れて、世界はどこへ向かっていくのでしょうか。

NHKの「激動の世界」という3夜に渡るシリーズの番組を見て、新たな不安を覚えました。シリアからの難民に苦慮するヨーロッパ、野望に燃えるプーチンのロシア、そして世界の警察官を降りたアメリカ。それぞれの苦悩と考惑が映し出された画面に、暗澹たる気持ちになりました。

戦争や虐殺などの人間の愚行を、まだくり返していくのだろうか、武力からは解決の道は見出せないと分かっているのではないか、そう叫びたい気持ちにかられますが、世の中は正論では動かないようです。私たちの知らない所で暗躍する人間もいて、表には出ない国々の事情もあるのでしょう。

だからといって私たちは絶望して生きて行くのは、あまりに残念です。戦場にあって死と隣り合わせの生活をしている人々、難民となりこの先の道が見えずにいる人、飢えに苦しみ餓死している人もいるというこの地球で、普通に暮らしていられる私たちは、何をすればいいのでしょうか。

今、私が大切だと思うことは本当にささやかながら、自分が恵まれていることを認識し、感謝することです。まず自分が争いをやめて幸せな気持ちで過ごすこと、そして自分の周りを幸せにしていくこと。物質的な贅沢を反省すること。過度なグルメや食べ過ぎ、食品の廃棄を減らすなど、改めるべき点は多くありそうです。食べ物以外にも、安いからと安易に物を買わず、使い捨てではなく自分の持ち物を大切にする心、清貧の思想に立ち返ることが、地球環境のためにも必要なことではないでしょうか。

想像力を働かせて、苦しんでいる人々を思いやる気持ちを持つこと。感謝と共に、世界の平和を願い祈り続けること。

私は音楽に携わる生活の中で、機会があれば拙いながらも心を込めて演奏をすること、生徒や学生に音楽の貴さや美しさを精一杯に伝えていくことだと思っています。

今、一人一人が平和な社会のために自分の出来ることを考える時代になったのだと思います。

  窪田由佳子