柔道の山下泰裕氏(現在、全日本柔道連盟副会長)の対談記事に、次のような言葉がありました。

「素晴らしい恩師との出会いが私の人生を決定づけました。先生が大切にされていたのは『人生の勝利者、人生のチャンピオン』になることでした」。その恩師はこう語ったそうです。柔道でチャンピオンになれるのは、一人しかいないけれど、柔道で学んだことを一生懸命に普段の生活の中で生かしていけば、それぞれが人生のチャンピオンになれると。


 スポーツでは勝敗が明確なゆえに、勝つことにこだわる傾向があります。音楽の世界でも今はコンクールの数が増え、競って上を目ざすよう指導されることが多いように思います。目標に向かって頑張ることはもちろん意味あることですが、数字や結果にこだわりすぎていないでしょうか。子どもの人間的成長や将来の幸福まで視野に入れた指導がなされているかどうか、疑問です。

 

女子の生理が止まってしまうようなダイエットを強要する体操や新体操の指導者、疲労骨折するほど厳しい練習を課すコーチ、またコンクールに通るためだけの基礎を無視した音楽指導など、目に余る実状を見聞きします。


 小学校での全国一斉実力テストの結果を公表する、しないで、今問題になっています。子どもの本当の学力をつけるような実のある指導ではなく、テスト結果の点数に惑わされて、実際にはテストの点を上げるための指導がなされたりしないでしょうか。大人たちの思惑に翻弄される子どもたちは、いい迷惑でしょう。


 勉強も運動も、人がより充実した豊かな人生を送るためにあるべきです。その根本を見失うことなく教育がなされて欲しいと思います。そのためには指導者が魅力ある大人になることが何より大切ではないでしょうか。


 最近になってやっと、日本の先生の労働時間の多さが問題になってきましたが、私たちは学校に期待や責任を押し付け過ぎてきたのではないでしょうか。学校の先生に時間的、精神的余裕をもってもらうことから始めるべきだと思います。そして山下氏の恩師のような、人間的で尊敬される指導者が増えてほしいものです。


心に響く言葉

    オンリーワンだったらみんながなれる 

   オンリーワンのナンバーワンなら誰でもなれる マキノ正幸