『ランボー 最後の戦場』ですが、『2』『3』とは別物です。

『2』はベトナム戦争を正当化し、ベトナムを悪とする脚本で、
国際的には批判を浴び、ヨーロッパでは上映禁止になりました。

『3』はアフガンゲリラをアメリカの友人、ソ連を悪と描いたのですが
(その点ではまだ『2』よりはまし)
友人であるはずのゲリラの一派が9.11を引き起こしたのは
皮肉を通り越して、プロパガンダに映画を使おうとした罰ですね。

いずれにしろ、前の2作は単なる娯楽映画、アクション映画の大作で、
中身はなんにもありません。


それに対してこの『最後の戦場』は、最初のランボーから続くメッセージに
ひとつの答えを提示しています。

最初のランボーではベトナム帰還兵の空虚さと疎外感が描かれ、
この映画ではそれが故に故郷を捨てたランボーが、
ニヒリズムから脱却して行動を起こし、もう一度故郷に戻るまでを描いています。

もちろん、ご存知の通り、ビルマの軍事政権を
絶対悪と描いているところは相変わらずですが、これはまだ事実に基づく話。
(ちなみに吹き替え版を見た人はわかると思いますが
「ミャンマー」ではなく「ビルマ」と言ってます。
つまりアメリカは軍事政権を正当な政権とは認めていないのです)

カレン族というのも実在の部族だそうですので、
そこには中途半端な描写は許されなかったのでしょう。

不殺を戒律とする熱心なキリスト教信者の医者が、
石をもって敵兵の頭を砕き殺害してしまう。

これが戦争なんだと。

土曜日に見た『ミッドナイトイーグル』です。

「ホワイトアウト」という映画が面白かったので、期待していたのですが、
どうやら私の勘違いみたいで、脚本の方だけ同じなのですね。

だから比較するのもあんまり意味はないのですけど、
メインの舞台が雪山なので、やっぱりつい比較してしまいますね。

で、結論から言うと、この映画は俳優さんの熱演をのぞけば
誉めるところが私には見つけられませんでした。

もうね、ネタバレって基本しないようにしているんだけど、
この映画だけはどうでもいいや。

まずこの映画、アルプスで起こっている事件と、
根っこが同じ事件が平行して東京でも起こっているんですが、
この2つの物語のテイストがまるっきり別の映画なんです。

アルプスの方は、ものすごくシリアスに進んでいきます。
逆に東京の方は、完璧にB級映画のノリ(ノリだけ)。

某国の工作員が簡単に素人に人質を奪還されるわ、
女性記者が拳銃ぶっぱなすわ、なんでもあり。

シリアスの方のアルプス側でも、工作員に待ち伏せされた
フル装備の自衛隊小隊が全滅しているのに、丸腰の新聞記者が
なぜか襲われても無傷で逃げ仰せているとか、
時間を追うに従って、むちゃくちゃになってきます。

そうすると今度は東京がなぜか突然公安がでばってきて
事件解決→首相官邸対策室に移動で、突然、藤竜也さんの
重厚な緊迫した演技に変わります。

後半はアルプスがB級テイストで東京がシリアステイストなんです。

で、どっちもものすごくテンポが悪い。
B級のノリも勢いも、シリアスな緊迫感も、
すべて間の抜けた演出ですっ飛んでしまってます。

あっという間にやられて1人だけ生き残った自衛官が
突如、スーパーマンになったがごとく、ばったばったと敵を打ち殺す?!

爆弾処理に向かったはずの自衛官なのに、爆弾を分解できない?!
犯罪に使われる時限爆弾なんかと違って、
兵器の爆弾なんてたとえ核爆弾でも構造は簡単ですよ。

自衛隊の救助ヘリ(戦闘要員積み込み済み)が、
任務も命令も無視してあっさり帰還する!?

30人に囲まれたろう城戦で、見方が1人死んでいる状況で、
戦闘を放棄して無線で長々と話してるかって!

しかも30人もいる敵さんも、なぜか囲まずに1方向からしか攻めない。

もうバカバカしくて一々取り上げる気にもなりません。


でもねぇ、大沢たかおさん、良かったですよぉ。
あと久々に見たけど吉田栄作さんも控えめながらいい顔でした。

そして、なんと言っても藤竜也さん。
こんなバカバカしい映画でも、彼が子役に語りかけるシーンなんかは
思わずグッと来ましたもの。

あれくらいの覚悟と決断力をもったリーダーが日本に欲しいと思いました。

竹内結子さんも、冒頭の喫茶店のシーンではなんかブッサイクなんです。
まぁ、久々のお仕事で顔が緩んでいるって感じでしょうか。

それがあっという間に輝く笑顔になっていたのには驚きました。
やっぱ、華のある女優さんですねぇ。


ですから、それぞれのファンの人は見るのを止めません。

けど、そうでない人はこの『ミッドナイトイーグル』、お勧めしません。


最後まで読んでくださったあなたに、全ての良きことが雪崩のごとく起きます。

これはホラー映画なのかな? パニック映画?

この映画はどう書いたってネタバレになりそうですね。
う~ん、困った。

とにかく、外敵に脅かされた集団が閉じ込められてしまって、
その中の人たちがどんどん追いつめられていくお話。

しかも登場人物一人ひとりは多少の癖はあるものの、
どこにでもいそうな人物ばかり。

もちろん映画ですから、わかりやすいようにキャラクター設定は
されています。典型的な小学校の校長タイプのおばあさんとか、
本当は小心者のくせに、やたら自分の勇気を誇示したがる人とか、
宗教にのめり込んでいる人(日本の場合キリスト教は少ないかもしれないけど、
新興宗教だとのめり込んでいる人って普通にいますよね)などなど。

そういうどこにでもいそうな人が、極限状態を体験するなかで
徐々に追いつめられて、集団ヒステリーというか(あ~!!ネタばれになる!!)


もちろん忘れてはならない外敵も・・・。


そして驚愕のラスト。

これは辛い。賛否両論あるでしょうねぇ。
ものすごく辛いラストになってますから。

ここまで救いがない終わり方にしなくてもという気もするんですが、
以下ネタバレになるかもしれないので伏せ文字にしておきます。


実はわりと映画の最初の方で子供のために霧の中に出て行った女性が
子供とともに救助されていて、そこにメッセージがあるんじゃないかと。

つまり、彼女は希望を捨てなかった。
しかし、主人公はあっさりとあきらめてしまった。

その結果があの残酷なラストなのだとすると、
やはりどんな結果であろうとも、それは全て自分の責任であったんだ
というようなことじゃないかな。



やっぱり、どんな時でも最善を尽くすだけではだめで、
希望を持ち続けることこそが大切なんだと。

最後まで読んでくださったあなたに、全ての良きことが雪崩のごとく起きます。