「悪質な捏造記事だ」――。6日の緊急会見で、実弟秘書官の“消えた融資1億円”関与疑惑を全面否定した高市早苗総務相(54)。

 三重県の農業法人が政策金融公庫から2億円超の融資を受け、うち1億円が焦げ付いているのだが、この融資に秘書官が関わっているのではないか、と週刊ポストが指摘したところ、色をなして反論したものだ。

 高市総務相は「私も秘書官も一切関与していない」と言っていたが、それにしても安倍首相の“お友だち”には醜聞が次から次へと出てくる。高市大臣は統一地方選の応援をキャンセルしているが、仕事よりも醜聞の否定に時間を取られているのだから世話はない。

 実弟秘書官の融資口利きを否定した高市大臣だが、実は過去にも数々の疑惑を指摘されている。

 日刊ゲンダイ本紙が問題視してきたのは、高市事務所と人材派遣会社「パソナ」との不透明な金銭関係だ。13年2月、政府の「若者・女性活躍推進フォーラム」にパソナの南部靖之代表が「有識者」として呼ばれた。

 ここで当時、自民党政調会長だった高市大臣はこう話していた。

「派遣業界については、パソナの南部会長がいらっしゃるから申し上げるのではないのですが、(私の事務所に)パソナから(スタッフが)継続的に来ていただいております。やはり契約がしっかりしている、はっきりしている」

 言うまでもなく、安倍政権が推し進めている雇用労働改革でボロ儲けするのがパソナだ。

 その裏ではASKAが出入りしていた豪華施設「仁風林」での政治家接待が露呈したが、パソナは有力政治家の事務所にも、“人”を送り込んでいたことになる。

■背後に安倍官邸のピリピリムード

 高市事務所によると、派遣スタッフは1人、後援会名簿の入力作業などを担当しているという。ところが、高市大臣の資金管理団体や政党支部の収支報告書を見ても、パソナとの具体的な金銭上のやりとりを示す記載は一切、出てこない。

 政治活動に関する支出の「不記載」は政治資金規正法に抵触する。昨年6月に本紙が高市事務所の会計責任者を取材した際の回答はこうだった。

「パソナへの支出は政党支部の報告書の『人件費』の項目に他の秘書やスタッフの給与と一緒に計上している。パソナにいくら支払っているか? 公開義務がないのだから、教える必要はない」

 高市事務所は2012年の衆院選の期間中も、「いわゆる選挙業務に関わっていないが、パソナのスタッフは事務所に常駐していた」と認めた。公職選挙法は選挙期間中の「国と請負契約の当事者」からの寄付の授受を禁じている。そこに追い打ちのようなポストの疑惑なのである。

 改めて本紙が前出の会計責任者に公選法違反の疑いを指摘すると、今度は態度を豹変させた。

「パソナ側は顧客情報の公開を良しとしていないので、紙面上に直接掲載することはご容赦願う」と条件をつけて、派遣スタッフの時給が記されたパソナとの契約書類などを本紙に見せた。ちゃんと、給与は払っている。寄付にはあたらないということだが、だったら、もったいぶることはない。

 高市大臣が疑惑否定にアタフタしているのは、安倍官邸がそれだけ追い詰められている裏返しに見える。高支持率なんて見せかけで、下村文科相の醜聞や行き詰まった基地問題や拉致交渉、アベノミクスへのいら立ちで、安倍官邸がピリピリしている。

 そこに新たな閣僚の醜聞は命取りになる。なるほど、“口利き疑惑”にもムキになるわけだが、もちろん、全面否定が墓穴を掘ることもある。

参考URL:http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/158753