欧米、アジア、中東など51カ国・地域の金融当局は、2017年をメドに監査法人を監督する新たな国際機関をつくる。世界展開する巨大な監査法人の監視には、国際的な連携が欠かせないと判断したためだ。01年に破綻した米エンロンの不正会計事件などをきっかけに監査法人への不信がくすぶっており、監督の強化を通じて信頼の確保につなげる。

 日本からは金融庁傘下の公認会計士・監査審査会が新機関の設立メンバーに加わる。政府は昨年6月に改訂した「日本再興戦略」に、日本の国際金融センターとしての地位を高める考えを盛り込んだ。金融庁はこの構想の一環として新機関の本部(事務局)を東京に誘致する方針で、16日午後に発表する。

 銀行にはバーゼル銀行監督委員会(本部スイス・バーゼル)、保険会社には保険監督者国際機構(IAIS、本部バーゼル)、証券会社には証券監督者国際機構(IOSCO、本部スペイン・マドリード)と、それぞれ当局者が集まる国際的な監督機関がある。自己資本比率のルールをつくったり、共同で監視したりする権限を持つ。

 監査法人には、そうした枠組みがない。お互いが意見交換する場はあるものの、監督実務は各国がバラバラに手がけているのが実情だ。

 新機関はまず、各国の監査法人に関する情報の共有からはじめる。ゆくゆくは共同での検査や監督の共通ルールづくりに乗り出す可能性もある。

 監査法人業界は世界的なネットワークを持つ巨大監査法人が大きなシェアを握り、グローバル企業から各国の中堅・中小企業まで幅広い企業を網羅している。

 KPMGやデロイト・トウシュ・トーマツ、プライスウォーターハウスクーパースなどが有名なグループだ。日本の監査法人もこれらと提携しており、あずさ監査法人がKPMG、新日本監査法人がアーンスト・アンド・ヤングといった具合に世界の巨大な系列のなかで活動している。

 金融庁は監査法人に対し、不正を見抜く能力を高めるよう求めている。04年には監査法人を自主規制する日本公認会計士協会とは別に、金融庁が公認会計士・監査審査会を設立し、監督体制を強化した。カネボウの不正会計などを見抜けなかったとして、中央青山監査法人(当時)に業務停止命令を発動。その後、同監査法人は解散した。

 提携先の巨大ネットワークの本部が米国にあると、日本だけで監督していても国境を越えて不正を犯していた場合には、監督しきれないおそれがある。銀行など他業態と同じように共同で監視できる体制づくりが急務となっていた。

参考URL:http://www.nikkei.com/article/DGXLASGC16H08_W5A110C1MM0000