自民党は若者層の支持率獲得に躍起になっている。街宣車にはアニメ調の塗装とキャラデザインを張付け、若者に感心が高いであろう安全保障の問題、そして強い日本という民族主義的な思想と強いリーダシップを演出する事で、支持率の拡大・維持を図ろうとしてる。そもそも、農村や地方そして年配層を地盤にした保守政党だった自民党が、TPPによる地方や農家による問題をはじめ、年金等の社会保障の切り詰めたあげく、消費税を2年連続で上げるという暴挙を前に、これまで定住的に自民党の支持層だった人々の感心は徐々に離れつつある様に感じる。

 更に、憲法改正の前段階である国民投票法で18歳以上という、元来にして平均的にはあまり政治の細部には感心の無い若年層をこれに巻き込む戦略の意図は、来年以降に大量に失職するであろう団塊世代が在宅となり、消費税等を初めとする社会保障の痛みを感じはじめ、その事による不満が政権与党に対して向く事への一種の防波堤も供えている。

 だが、そもそも前回自民党が大勝したと言われる選挙の投票率は50%程度であり、国民の半数が不参加の中での選挙で、自民党は単独過半数を占め勝ち誇っている、言わばおごりなのだ。そして、選挙に行く献身的な知識層の若者の中には、保守的であったり民族的な考え方を持つ者が多いのは事実だが、道理に彼らは嘗ての団塊世代の様に夢やロマンの政治に共感するものでは無く、実利的且つ論理的でしかも合理的な物を精査して、判断基準にする。来年以降の消費増税によって景気が停滞したり、TPP等の影響により日本市場が実害を生じたり、外国人労働者を事実上受け入れる体制に移行する規制緩和を行う等の制作を矢継ぎ早に打ち出した場合には、必ず彼らの目指す若年層からメスを入れられる。

 また、最も危惧すべきは保守的な若者層でも投票に積極的な知識層の中には機密保護法に乖離的な意見を持つ者も少なく無い。前回の機密保護法策定時の拙速ぶりにより、法案の中身の杜撰さが露呈し、万が一衆院可決時の法律がそのままノーチェックで参院を可決していたら、というIFの中では流石の保守層からも批判の声が出かねない。

 そうした中で、政府は憲法改正を何故か9条一本に絞らず96条をクリップ法案にしようとしている。これは内閣に立法権を持たせ、立法府の力を削ぐ為の前段階に行きたいその第一ステップなのだが、はたしてこのまま阿呆な国民にアニメを見せて、勇ましい言葉だけで捲し立てて過半数が取れるのかと言う事は甚だ疑問だ。

 そして決定的な事は、安倍総理の女性人気が甚だしく悪い。党三役にお飾り女子を添えて男女共同参加のフラッグにしようとしたのだろうが、内閣の中でも起用されている女性閣僚がどれほど実力を持ってして選ばれたのが甚だしく疑問だ。彼女達の委員会質疑、記者会見の答弁を聞いても適任とは思えない程の人選で、まるでゴールドマンサックスに支配された米国財務省の財務長官ロボットを見ているかの様だ。強い内閣に有能な大臣は必要無く、従順な大臣が最も適任で、歯向かう大臣は入れ替えてでも信念を通す。・・・どこかで聞いた事のある響きの内閣組織だと思ったら、英国の鉄の女、保守党のサッチャー内閣だった。

 国民の半数は女性である。不幸な事にこの国は女性の参政権を認めてしまっている。従って男尊女卑の政策ばかりやっていては国が回らない筈なのに、この日本国の女性の忍耐力は東北大地震で海外から称賛された程の立派な我慢強さを持っている。そして、お上に反抗しないという米国では銃規制がそれによって拒まれている、国民の抵抗権を行使しようとしない。国が軍隊を持ち、莫大な防衛予算を割き、世界最大の貿易国と別に仲良くしなくても、政府が適当に自分達の身の回りの問題をなんとかしてくれるだろう。そう期待しているだけで、老いも若きも皆自民党に一票を入れて来たのだ。

 本来であれば、森元首相の名言の様に、「有権者は寝ててくれれば助かる」はずなのである。つまり、血気盛んな若者には出来るだけ選挙には行かないでもらって、地方農村の保守的な人々と、熱心に末期迄自民党の代議士の手を握りながら「先生!先生!」と連呼し、彼らの政治を信じ切っているおじいちゃんおばあちゃん達だけが選挙に行ってくれればそれで良かったはずなのだ。実際に前回の選挙でも投票所を時間よりも早く閉めた場所が幾つもあったが、それの具体的な事実が分かったのは数日後で、全国各地の選管もこれを黙殺した。つまり、アメリカの選挙時に貧困層や有色人種の地区の投票所への道を警察が公然と封鎖し選挙妨害を行った様な事を、小選挙区にて非自民が優勢な地区へ、公安と警察が公権力を持って堂々と行い、その事実をメディアにも規制をかけ一切を報道させなければ、日本という国はこれほど盤石な選挙システムは存在しないはずなのだ。しかし、天皇に仕える検察を初めとする最高官僚達は、たかが一政党の飛躍の為だけには選挙には加担しないし、またそれを自ら法律違反と記している。だが、話が自分達に利益を齎す憲法改正に関わる国民投票法となれば話は別である。だからこそ、この選挙に於ける公務員の活動規範を緩和したのである。

 こうした歴史と背景がありながら、今の自民党は今後起きるであろう問題を鑑みた所で、地方と農村を切り捨てる事にしたのだろう。彼らに変わる新しい投票力は何か、それは血気盛んに勇ましさと萌えさを求める若者層である。これを軸に新しい自民党層の拡大を計ろうと模索したのだろうが、大間違いである。

 ネトウヨと言われる所謂右翼系の人々でさえ、ネットに関連した社会の中に生きていればこそ、その世界に対する規制という物にはこれ以上無く反発する。いわば、4chから波及しアラブの春革命の援護射撃まで行ったと自負するアノニマス達の様な子供の集団的存在なのだ。彼らの生態系に対して害を及ぼす様な事を行った瞬間から、わがままな子供はそのまま猟奇的な殺人鬼とさえ化す事がある。

 小保方事件の発端が重度に妬みを持つ粗捜し屋が内通して発覚する様に、知識層とそうしたネトウヨ層の利害が一致するような、例えば青少年育成保護条例/法的な概念の性質の物が憲法改正等の中身に出て来た場合、年齢層を下げた事によって逆に実害を被る事になる。

 安倍首相はある意味での独特な正義感と人の良さ、そして日本人特有の人垂らし術に優れていて、それによって多くの官僚も彼に味方(している様に見せていたり)する者も出て来る。しかし、彼は気が短く好戦的な所もあるが、逆に冷酷な政治力に欠けている部分もあるように思える。今彼の望むべき姿の憲法改正をしたかったら、とるべき道は間口を広げるのでは無く狭める事である。要するに、ある第三者機関が設けた規定に反する国民の国民投票権は認められないとする様なシステムを構築する事だ。個人の意志の自由は有るが、憲法の策定に関わるプロセスに特定の宗教若しくは偏った思想の持ち主、或は団体や大学等に所属する者の投票を禁ずる事を、平等の観点から行い、作る事が必要だろう。年齢を下げる事では無いはずだ。