街で知り合った女性と意気投合して、その日のうちに大人の関係になり、本人はちょっとした火遊びのつもりかもしれないが、行きずりのセックスは避けたほうがいいらしい。合意のうえで楽しんだつもりでも、後で女性が豹変して「レイプされた」と訴えてくるリスクがあるかららしい。
性犯罪の罪は重い。暴行や脅迫によってセックスすれば強姦罪で、3年以上の有期懲役(刑法177条)。セックスに至らずとも、暴行や脅迫でわいせつ行為に及べば、強制わいせつ罪で6カ月以上10年以下の懲役に処される(同176条)。
合意のうえのセックスだったはずなのに、どうして後で女性から訴えられるのか。刑事弁護に詳しい長谷川裕雅弁護士は次のように解説する。
「よくあるのが、お酒を飲んで性行為をした後、『酔っていて前後不覚だった』と女性が主張するケースです。正常な判断ができないほど酩酊していたかどうか、男性が外から見て判断するのは難しい。そこで誤解が生じて事件化する場合が多い」
暴行や脅迫がなくても、女性を酩酊状態にして抵抗できなくしたうえでセックスに及べば準強姦罪が成立する(刑法178条)。準強姦罪の法定刑は、強姦罪と同じく3年以上の有期懲役。「お酒でムードを高めてから」という口説き方は、法律的には危険極まりないのである。
男性が勘違いしやすいポイントはほかにもある。たとえば「地べたでセックスすれば強姦だが、ハンカチを敷けば和姦」という噂を聞いたことはないだろうか。これは都市伝説レベルの嘘だ。
「強姦かどうか、すなわち女性の同意があったかどうかは、犯行の時刻や場所、周囲の状況、犯行に至る経緯や具体的プロセス、女性の年齢や立場、性体験の多寡などによって総合的に判断されます。これさえ満たせば和姦になるという絶対的な条件はないと考えたほうがいい」(同)
かつては和姦を示した有力な証拠が、最近は通用しなくなりつつあることにも注意したい。
「以前は行為が行われた場所がラブホテルなら、女性を担いで連れ込んだという状況でもないかぎり、お互い合意のうえの性行為だったと認められやす かった。ところが最近はラブホテルでも強姦罪に問われるケースが増えてきました。なかにはホテルから駅まで2人で談笑しながら歩いて帰ったのに告訴された ケースもありました」(同)
男性が勝手な思い込みをやめて女性の意思を慎重に確認すれば、強姦事件は起きないのだろうか。答えはノーだ。仮に女性が明確に合意の意思を示したと しても安心はできない。強姦事件の被害者の中には、示談金狙いの美人局や、夫や恋人に浮気がバレて、それをごまかすために「無理やりレイプされた」と嘘を つく女性もいるからだ。
強姦罪は親告罪の一つで、被害者の告訴があってはじめて起訴できる。親告罪の告訴期間は犯人を知ってから6カ月以内だが、2000年の刑事訴訟法改 正で性犯罪についての告訴期間が撤廃された。つまり数年前の“一夜の過ち”をネタに、いきなり訴えられる可能性もあるのだ。男性はこうした訴えから、身を 守る術はあるのだろうか。
「行きずりの人とは情交を持たないことが一番の予防です。性病のリスクを考えて不特定多数との行為を避ける人は多いかもしれませんが、法的な意味でも不特定多数との行為を避けることは重要」(同)
ただ、旧知の間柄でも注意は必要だ。夫婦間で強姦罪が成立した判例があるように(鳥取地裁 昭和61年12月17日)、行きずりのセックスでなくても訴えられるリスクは残っている。
「普段から付き合いのある関係なら、好意を寄せられていることを示すメールや写真があるはず。それらが残っていれば、万が一のとき自分の身を守ってくれることもあります」(同)
参考URL:http://president.jp.reuters.com/article/2011/06/22/14980F2C-95A0-11E0-8FC0-94083F99CD51.php