おしんスッチー 初めてのフライトNRT→LAX

ＧＷも終わりましたね。

ＧＷといえば、思い出す、１９９０年のＧＷ！

生涯忘れられない私のフライトデビューの日。

慣れない初めてのことって、すごく疲れるものだけど、

よりによって、ＧＷ真っ只中の、

それもいきなりロサンジェルス便のロングフライト。

そうよ、連日、テレビのニュースでは人でごった返す

成田空港の様子を映し出していたわ。

飛ぶ前からわかっていたわ・・・私の初フライトは、

すごく大変なものになるってことは！

早く寝なきゃ！　と思っても・・・

興奮してなかなか眠れやしないじゃない！！

寝返り、トイレ、溜息、寝返り、トイレの繰り返しで・・・

そうして、迎えた初フライトの朝。

寝たのか寝ていないのかわからない時ってあるじゃない？

まさにそんな感じ・・・。

でもね、そんなこと言っていても仕方ないわ！

早速支度に取り掛かる。

１２時半までに制服に着替え、スタンバイしていればいいわけで・・・

となると、余裕を持って、

成田空港には１１時半までに着けばいいわね。

う・・・んでも、ＧＷ真っ只中なわけよね。

かなりの渋滞が予想されるわ！　早めに家を出た方がいいわ！

そう・・・空港には１１時半に着けばよかったはず。

なのに・・・どうしたというの！！

時計を見ると、まだ９時過ぎである。

どんだけ余裕を持って出て来たんだよ？　私・・・。

まだロッカールームに行くには２時間半以上時間がある。

私は空港の滑走路が良く見えるコーヒーショップに入り、

コーヒーを頼んだ。

ＢＧＭは♪シャバダ～シャバシャバダ～♪

（ｂｙ　ネスカフェ　ゴールドブレンド）

「フライト前は、早めに空港に来て、ここでいつもコーヒーを一杯頂くことにしています。今日はどんなお客様にお会いできるのか・・・そんなことを考えて・・・私のフライト前の至福の時です」

そう言って滑走路を背に微笑むスチュワーデスのカータンさん。

ほら、このまま雑誌の紙面に登場しても

おかしくないシチュエーションじゃない？　ステキだわ～

そんなオリジナル脚本で酔いしれるも・・・

時間はまだ山のようにあった。

仕方ない、サンドイッチを頼んだ。

「体力勝負の仕事ですので、フライト前にしっかり食事は常識です！」

そう言って、空港のティールームでサンドイッチを頂く、

スチュワーデスのカータンさん。

これもそのまま雑誌の紙面飾っちゃうわね～

なんて酔いしれていたものの・・・

２時間半は長かった。長すぎた。

それも私にはこれから１０数時間にも及ぶ、

初乗務が待っているというのに・・・。

ロッカールームに行く頃には、かなりの疲労感に襲われていた・・・。

でも、私は新人！　さっと制服に着替えて・・・

先輩を待ち、最高の笑顔で挨拶だ！

この日、ＯＪＴとしてもう１人、同期のＦが乗務することになっていた。

成田の控え室で、これからのロングフライト、

我々はまず何をして、どうしなければならないのか、

先輩から最終的な指示をいろいろ受けていた。

先輩が教えてくださることは、聞き漏らさないようにすぐにメモ、メモ。

ところが・・・

先輩が大切な話をしている最中であるにもかかわらず、

私の下半身は・・・極度の緊張と、

それからさっき飲んだ大量のコーヒーが暴れまくり・・・

メモどころの事態ではなかった！

トイレと控え室をバタバタと・・・

何度も先輩の話を中断させ・・・トイレに駆け込む私・・・。

先輩も呆れてしたし、同期のＦにも心配を掛けてしまっていた。

できればこのまま家に帰りたい！！　そして、眠りたい！

でも、私は社会人だ！　

このまま「寝不足で体調が悪いので帰ります！」　

なんて言えるはずはなく・・・。

最悪なコンディションの中、フライトは始まった。

新人のＦと私は搭乗口でお客様をお出迎えだ。

想像はしていたが、満々席の機内。

新人の私たちにとって、入口で４００人近いお客様１人１人に

ご挨拶も決して簡単なことではなかった。

そうして、最後のお客様を乗せたのを確認すると、

飛行機の厚いドアは閉じられた。

バタン！！

その時、私はある恐怖に包まれた。

もう逃げ出すことはできないという恐怖！

そうだ、私が人生で初めてこの気持ちを味わったのは、小学生の時。

学校で受けさせられた予防接種の順番待ち・・・。

もう後には引けない・・・って、迫り来る自分の順番に怯えながら

そんな気持ちになっていたっけ・・・。

（余談だが、この恐怖心、私がこのフライトの次に味わったのは、

長女を産む時に上がった分娩台の上・・・　余談終わり）

どんなに寝ていなくても、疲れていようが、

１０時間以上のフライトは始まるわけで・・・。

何もかもが初めてのフライトは、本当にヘビーで

でもって、決してあっという間の時間ではなく・・・

まだ７時間もある・・・まだ５時間も・・・と長く長く感じられた。

気がつけば、足が浮腫んで痛くて痛くてたまらなかった。

パンパンになった足を引きずりながら、私はトイレ掃除をしていた。

鏡に映ったボロ雑巾のような自分・・・そんな自分の姿を見たとき、

私は決心したのであった。

「このフライトで辞めよう！

あっ、でも、帰りのフライトも乗務しないとならないから

帰り成田に着いたら、そのまま会社に辞表を出して帰ろう！」

こんなハードな仕事だと思わなかった！

こんなんじゃ続けられる自信がないもの・・・。

私には向いてなかったのよ・・・。

そう・・・これが私の最後から２回目のフライトになるの・・・。

そう思ったら、少し気が楽になった。

地獄の１０数時間も、残りわずかとなった。

もうすぐロサンジェルス国際航空に到着する・・・という時。

先輩が言った。　

私が？　アナウンスを？

一瞬躊躇ったものの・・・そうだわ！！

これが私の人生最後のアナウンスになるかもしれない。

良い思い出になるはずだわ・・・。

人生最初で最後のアナウンスか・・・そう思うと力が入った。

ジャンプシートに座ってからも、落ち着かず、

マニュアル本を手に何度も何度も練習した。

ドドドン！！！

飛行機はロサンジェルスに到着した。

その時私の目に入ったもの。

空港で働くマッチョなブロンドのお兄さん・・・。

私が乗った飛行機に向かってカートを走らせている。

それはまるで「君の到着を待っていたぜ、ベェビー」

と言っているように私の目には映った。（言ってないって！！）

そして、乗客の皆さん・・・。

まるで、私の方を見て

「お疲れ様！　ありがとう！」「あなた最高だったわ！　」

と言っているよう・・・（言ってないって！！）

窓からは朝の優しい光が私を照らし・・・

気がつけば・・・

スポットライトの輝くステージに私はいたわ・・・。

ありがとう！　皆！　ありがとう！

極度の疲れから来る興奮状態、

そこから来る自意識過剰・・・

ラストコンサートのステージに上がった私は

ファンに向かってマイクを握り締めていたわ・・・。

そして、声を震わせながら・・・アナウンスをしたわ。

ご搭乗機・・・うぅ・・・、

ただ今・・・うぅ、ロサンジェルス国際空港に・・・ヒック・・・

到着いたしましたうぅ・・・。

現地時間は、午前７時２０分です。

・・・・略・・・・

皆様と・・・（鼻をすする）また機内でお目にかかれますよう・・・

（ごめんね、皆、私は引退するけど・・・）、

乗務員一同お待ちしておりますうぅ・・・。

出口での挨拶もね、お客さま１人１人にね、

両手を差し出して握手したいようなそんな気分だった・・・。

まったく何様だよ！　あんたって、思われようが、

その時の私の精神状態はハイのハイ！

高度１万メートルをも超えていたかもしれない・・・。

でも・・・体は正直だった。

１０数時間、機内を歩き回った足はまるで言うことをきかなくなっていて、まともに歩けず・・・。

まさにアヒル！！

初めて仕事で降り立ったロサンジェルス国際空港、

颯爽とカートを引くスチュワーデスの姿はどこ？

同期のＦもまったく同じ状態で、２羽のアヒルはペタペタと

ホテルに向かうバスまで歩いた・・・。

この時の私たち・・・

ホテルに向かうバスの中で、

新人に課せられる「ＯＪＴの儀式」が待っているとも知らず・・・。

ペタペタペタ・・・一所懸命バスまで歩いた・・・。

ペタペタペタ・・・ペタペタペタ・・・・

　　　　　　　　「おしんスッチー　最後のフライトＬＡＸ→ＮＲＴ」につづく

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皆さん、ＧＷは如何過ごされましたか？　我が家もＥＴＣを利用して、例によって湯沢に３泊４日行ってきました。そして、この旅行中、ついに新潟でアイランドヴィレッジデビューも果たしました。が・・・私は優秀なバイヤーではなかったようで、これは！！　と思って、買ったものの・・・結局失敗に終わりました。

後日、これも記事にできたらと思ってます。

では、今日も最後までお付き合い下さり、ありがとうございました！