ーーある日、夢を見た。
 わたしは夢の中で出会った親切な老人に、“死にたい”と打ち明けた。長く白いヒゲをたくわえたその老人は、こくりと頷き、わたしに薬を差し出した。わたしは一瞬で、意識が朦朧とした。
 そして老人に手をひかれ、公開処刑台に立たされた。親族達は、喪服を着て椅子に腰かけこちらを凝視し、葬儀を始めるスタンバイを、今か今かと準備万端整えていた。
 わたしの朦朧とした意識は、状況をおぼろげに把握し、恐怖で薬が覚めてしまった。完全に意識がないままなら、痛みも感じず死んでしまえたかもしれぬのに、中途半端に目を覚ましたわたしは、怖くて足がすくんだ。痛みを伴うのが怖かった。
 後悔。しかし、もう後にはひけない状況に陥っていた。
 ハッとなり、夢から飛び起きた。目が覚めてもしばらく、涙が止まらなかった。
 生き地獄ーーー。わたしに安住の地など何処にもありはしないのだ、と悟った。