俺は、晒し物にされた姿を隠したいあまり、後ろを振り返る。ぼーっと霞んだ緑の靄の中から、一匹の金魚が現れる。金魚達は、異物を発見したとばかりに続々と集まり、俺をグルッと囲った。そして、目を釣り上げ、こちらをギッっと睨みつけている。

"お前なんかにあーだこーだいわれる筋合いねぇんだよ"

と云わんばかりに。俺はそら恐ろしくなり、金魚達から視線を逸らそうと、とっさに頭上を見上げる。おびただしい数の汚らしい糞にまみれた水の中から目を凝らすと、大きな鳥が旋回し、こちらを窺っている。まるで、俺がこと切れて、浮かび上がるのを心待ちにしているとでもいうようにーーー。

 俺は四方八方を敵に囲まれ、"ここから出してくれ!"と、ガラスが砕けそうなほど叩きつける。その物々しい音に反応した人間達が、何事かと集まってくる。

"出してくれ!

おいっ、頼むから誰か、こっから俺を連れ出せって!"

 しかし人間どもは、どうしたもんかとキョトンするばかり。俺は声にならない叫び声をあげながらも尚、拳から血が出そうなほど我武者羅にガラスを叩き続ける。

"ドンドンドンドンドンッ"と。