前回ご紹介したアルバム『FRESH』('73)は、当時ボロボロの状態だったスライが作り上げた、まさに神憑り的なアルバムでした。


 

 


そういえば、初めて買ったフレッシュのCDはSONYの国内盤だったのですが、後に物の本で調べたところ、1曲目の「In time」以外全て正規の物とは別テイクだったと知って衝撃を受けた事があります。

別テイクを最初に何年も聴き込んでしまったがな。。
どうしてくれんねん、と思ったのを覚えています(-_-;)

当時来日した海外ミュージシャンは、喜んで国内盤を購入していったとか(^^;


そうそう、マービン・ゲイのこれも73年アルバム『Let's get it on』、僕はビクターがCDを再発した時に初めて購入して聴き込みました。

大好きなアルバムになり、ジャケットもカッコいいので数年後に当時の古いレコードも購入、アナログの音、超楽しみ~と針を落としてみると。。

3曲目の『If I should die tonight』のイントロに、大仰なストリングスが!!
「な、なんじゃこりゃ~!だ、ださいっ!」

しかし後に調べたところ、ストリングス入りのバージョンが正規に発売された物と分かるのでした。。

ストリングス無しで最初に聴き込んで馴染んでしまったので、正規版イントロは僕の中ではいまだに違和感ばりばりです。。(-_-;) 

当時は(今もか?)こんな手違いも結構あったようですね。
芸術作品なんだからちゃんと音確認してよね、と文句の一つも思っちゃいますが、マスター・テープの消失なんて話もしょっちゅうあるくらいですから、まぁ仕方ないのかもしれませんね。
もしこれから『フレッシュ』を購入される方は、先ずは輸入盤をおすすめします(^^)


長い余談になってしまいました(^^;

今回は、名カバーについて少しお話を。

前述したスライのアルバムには、ドリス・デイで有名な『Que sera sera (ケセラセラ)』('56)が入っています。

ワルツの拍子で、軽快に歌われるナンバー。
ヒッチコックの映画『知りすぎた男』が初出のようですね。



小さい頃ママに、私は何になるの?美人になるかしら?お金持ちになれるの?などと聞くと、
ケセラセラ、(大丈夫よ)、なるようになるわ、(どんな風にだってなれるわ)、
といった内容。
その時代のアメリカの(白人の)雰囲気や、アメリカン・ドリームの匂いを感じさせるオプティミスティックなナンバーですね。

その明るい曲を、スライは73年という時代にカバーしたのでした。
スライが歌うと歌詞の意味が全て変わってしまっています。



「ケセラセラ、なるようになるさ、そう、(どうせ)なるようにしかならないのさ」

フラワー・ムーブメントも尻すぼみとなり、白人とカラードの融和を高らかに謳って、歌ってきた60年代の高揚感も、結局何も変わらなかったと諦めと共に終わりを告げ、泥沼化するベトナム戦争など時代の重い空気の中、黒人側からの強烈な皮肉として歌っているように感じられます。

聞いた当時、こんなカバーの手法があるのか!と衝撃を受けました。


ただ、今回改めて少しググってみると、普通にポジティブな名カバーと捉えている方も沢山いるようですね。

これは感じ方も人それぞれ、ということで。

僕個人の感じ方ではありますが、歌詞の意味を逆転させてしまうこのアイロニーは、スライならではの強烈な一撃と思います。

他にも素晴らしい曲が沢山入っている『フレッシュ』、ぜひご一聴のほどを。
名曲選りすぐりのベストも(^^)