ちょっと前、たまたま入った古書店で見つけた本がある。タイトルは「健康住宅設計圖案集」。刊行は昭和5年3月14日。定価は2円80銭。なかなかのアンティークものの本だ。大阪毎日新聞社が行った「健康住宅コンペ」の優秀作品がまとめられたものらしい。
開いてみて驚いた。和風平屋住宅全盛かと思いきや、小さいけれど華やかでカワイイ住宅がたくさん載っているのだ。三角屋根にスペイン瓦をのっけた(あったんだねぇ、昭和5年に)スパニッシュ風なものや、
なんとなくプレーリースタイル風とか、
コルビュジェ先生もびっくり、木造のインターナショナルスタイル風のものまである。こんな屋根のない、木綿豆腐のような住宅、昭和5年では相当斬新なものだったはず。
最近の洋風住宅メーカーも真っ青。ずっとずっとおしゃれな洋の住宅を作っていたのだ。「テレース(テラス)」、「プライベーシー」と聞いた発音そのままカタカナにしたような訳、「スパニッシュに日本趣味を融合せしめたり」といかにも昭和初期な言葉使いも面白い。
さらに、「窓寄りにソファーを作り付け、心地よくつかえませう」、「フレンチドアーを開けてテレース(テラスです)に出ませう」などなど、一生懸命に洋を取り入れた、快適でイカした住宅を作ろうとしている空気がビシビシと伝わってくる。
プレゼンテーションの仕方もそれぞれ設計者の特徴が出ていて、こんなグラフィックデザインのようなものや・・・
家に後光が差してるようなチョンチョンを書いていたり、これよく見ると塀の左側の犬おしっこ引っかけてるといったコミカルなものまである。
そして前のこの本の所有者も熱心な人だったらしく、ところどころに自分で書いた設計図や写真の切り抜きまで。
前の所有者はこれから家を建てるために勉強中だったのか、もしかしたら建築家だったのかも。
今のように便利な機能はないけれど、太陽の動きに合わせた部屋のレイアウト、家の中に空気の流れを作って冷暖房効果を高める工夫、暖炉やちいさな池など自然の力を利用して快適な空間を作る設計はまさにエコ。これからの時代の住宅設計にも利用できる工夫が満載だ、
80年以上の時を超えて、ワタシの手元にやってきた貴重な本。大事にとっておきましょう。