腸内細菌が大事とよく言われます。ただ、腸内細菌叢の組成は複雑なので、単独のサプリや特定の食材では改善が難しい場合もあるようです。だったら、健康な人の腸内細菌叢をソックリそのまま移すという、便移植という方法があります。便移植というと気持ちが悪いですが、不純物は濾過してきれいに取り除き、感染症対策も現在はしっかりしていて、腸内細菌叢だけを専用の液体と一緒に大腸カメラで腸の奥まで挿入するそうです(経口カプセル方式もある)日本では保険適応でないですが、海外では結構盛んなようです。
ただ、米国の普通体型の女性が、重い感染症の治療のため(肥満体型の)娘さんから便移植を受けたら、感染症は治ったけど、娘さんのような肥満体型になってしまったそうです。痩せたくてもなかなか痩せられない人は腸内細菌も関係してるのかもです。また、肥満菌があるのならば、痩せ菌もあるのかもしれませんね。
この便移植が、うつや下痢型過敏性腸症候群、自己免疫疾患(潰瘍性大腸炎など)に効くという報告は多いそうです。自己免疫疾患とは、本来は外敵を排除するはずの(自己の)免疫細胞が、なぜか自分の正常組織(臓器、骨、軟骨など)を敵とみなして攻撃してしまう病態です。その攻撃対象が甲状腺なら橋本病、唾液腺(涙腺)ならシェーグレン症候群、腎臓ならIgA腎症、膵臓なら1型糖尿病、関節なら関節リウマチということになります。これは免疫の過剰応答(免疫の暴走)を抑えるはずの、制御性T細胞の機能が低下することが原因と考えられています。
一部抜粋:橋本病(慢性甲状腺炎)や甲状腺機能亢進症/バセドウ病の発症にも同様の理由で腸内細菌叢(腸内フローラ)が関与している可能性があります。
一部要旨:IgA腎症のヒト化マウスモデルで便移植すると、腎臓の炎症を調節する(弱める)ことができた。
要旨:1型糖尿病患者への便移植で、1型糖尿病の進行を抑制する可能性が示唆された。
これらの結果を見る限り、腸内細菌叢が免疫の安定に関与するのは間違いないでしょう。ただし免疫が強すぎれば過剰な炎症(サイトカインストーム)となるし、逆に弱すぎても有害な異物の排除ができず、感染症などに対して弱くなってしまいます。なので、炎症があったとしても、その炎症を出来るだけ早く、スムーズに収束できることが本当の免疫力なのではないでしょうか。慢性炎症が一番良くないです。
私は長年、糖質制限を実践してますが、時折聞く糖質制限のリバウンドというのも、食べる食材による腸内細菌叢の悪化が主原因ではないでしょうか。糖質制限を始めた頃には血糖値やHbA1cも下がって順調だったのに、1年程してくると徐々に効果が薄れてリバウンドしてくる、という現象が実際にあるようです。腸内細菌叢はジワリジワリと時間と日数をかけて変化してきます。野菜をまったく食べずに、高温調理した(焼いた)ステーキや唐揚げ(終末糖化産物AGEs生成)、ファーストフード、添加物が多い超加工食品などばかり毎日食べ続けたら、徐々に腸内の悪玉菌も増えてきそうな感じがします。
一部抜粋:~腸内フローラのバランスの乱れは、さまざまな体の不調や、ウイルスなどに対する免疫、2型糖尿病や肥満、炎症性腸疾患、がんなどにも関わっていると注目されている。
米国のシダーズ・サイナイ医療センターの研究によると、あるタイプの腸内細菌が2型糖尿病のリスクを高めている可能性がある。糖尿病から保護する働きをしている腸内細菌もあるという。腸内細菌のひとつであるコプロコッカス属は、消化や吸収をサポートしたり、免疫機能に関わる働きをする善玉菌とみられている。ほとんどの人はコプロコッカス属の菌を保有しているが、人によって多かったり少なかったりする。研究グループは、腸内にこのコプロコッカス属の菌を多くもっている人は、インスリン感受性が高く、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが効きやすい傾向があることを突き止めた。
日本の理化学研究所や東京大学などは8月に、2型糖尿病や肥満と関連の深いインスリン抵抗性を改善する、腸内細菌やその代謝物を特定したと発表した。~京都大学などの研究では、和食に欠かせない漬物などの発酵食品を食べることも、糖尿病や肥満の予防・改善に有用である可能性が示された。漬物などの発酵食品の発酵に用いられる乳酸菌であるL.メセンテロイデスによる代謝産物は、体に有用な働きをする短鎖脂肪酸の産生を促し、2型糖尿病や肥満などの予防・改善に役立っていると考えられる。~引用ここまで
私の体験ですが、妻が死んでから長年続いていた原因不明の過敏性腸症候群が、いつの間にか治っています。私は現在も朝の起き掛けに黒ニンニク一粒と、アマニ油をかけた納豆一パックを食べています。私には発酵食品が合っているようです。