尿から糖を出すSGLT2阻害薬は、本来は糖尿病の薬で、いわば薬剤による糖質制限です。日本では6種類あり(兄弟姉妹)そのうちのジャディアンスとフォシーガは(糖尿病が無くても)慢性心不全や慢性腎臓病に保険適応があります。ただ、糖尿病の薬なのになぜ腎臓や心臓の保護効果があるのか、まだハッキリわからないようです。当初はこの薬による利尿作用で(塩分や水分が排出され)浮腫みが減る効果が有力視されていたようです。ところがそれだけでなく、最近ではSGLT2阻害薬の抗炎症効果が有力視されてるようです。SGLT2阻害薬の特徴である「食後血糖値はほとんど下げないけど、インスリンによらず空腹時血糖値が下がり、その時にケトン体が少し増える、そして増えたケトン体は過剰な糖新生を抑制する・・」このパターンに抗炎症効果がありそうです。

 

心房細動とは心臓を動かす電気信号の乱れによって生じ、脈が乱れて不整脈になってしまう病態です。不整脈になると心房(心臓内の部屋)内の血液がよどんで固まり(血栓)それが全身に回り、大事な血管を塞いでしまうことがあります(脳梗塞など)これは非常に危ないです。心房細動の原因には年齢、高血圧、糖尿病、ストレスなどがあるようですが、心房細動が炎症と関係してることもまた確かなようです。

 

一部抜粋:心房細動の患者では、からだに炎症があることを示すCRPという物質の数値が高いことが分かっています。今回の論文では、心房細動自体がこの炎症の原因となっていることを示す結果が提示されています~この論文では心房細動それ自体が、炎症を引き起こすことを示唆していますが、実際は炎症によって心房細動が引き起こされているとも考えられています。このため心房細動の予防に、こうした炎症を抑える薬が有望視されているわけです~ここまで

 

SGLT2阻害薬にはこの心房細動を抑制する効果があるようです。

https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/JAHA.121.022222 米国心臓協会ジャーナル(AHA)                            2021年9月

要旨:SGLT2阻害薬は、死亡率を含む心血管疾患(心筋梗塞、狭心症、心不全など)の悪化を減少させますが、心房細動に対する影響は不明です。75,279人の調査でSGLT2阻害薬による重篤な心房細動の発症リスクが低いことが裏付けられ、別の18,832人の調査では、心房細動の病歴がある患者の心不全、または心血管死のリスクを低下させる結果となりました。SGLT2阻害薬は心房細動の発症を軽減し、心不全による入院/心血管系死亡を(心房細動の病歴の有無にかかわらず)同程度に減少させる可能性があります。

 

やはり鍵は炎症(特にCRP)を抑えることにあるようです。そしてオメガ3にもやはりCRP値を抑える効果があるようです

要旨:オメガ-3は、全身性炎症のマーカーであるCRPレベルを低下させることにより、コロナの重症度を軽減する可能性があります。この研究には、274 人の患者を対象とした 4 つのランダム比較試験が含まれます。オメガ 3 は、新型コロナウイルス感染症患者の CRP レベルを低下させることにより、全身性炎症に対して有望な効果を示しました~ここまで

 

さらに最新の米国心臓病学会ジャーナル(JACC)2023年7月には次のように書かれています。

https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jacc.2023.05.024

要旨:オメガ 3 と心房細動の関係については、依然として議論の余地があります。私達が17のコホート研究からの54,799人の参加者を調査したところ、オメガ 3 の体内レベルは、心房細動発症リスクの増加と関連していませんでした。私たちのデータは、心房細動のリスクに関して、オメガ 3 の習慣的な食事摂取の安全性を示唆しています。有害な冠動脈発症(心臓突然死、心筋梗塞、狭心症など)の予防におけるこれらの脂肪酸の既知の利点と組み合わせると、私たちの研究は、魚/オメガ3脂肪酸の摂取を推奨する現在の食事ガイドラインを維持できることを示唆しています~ここまで

 

長年フィッシュケトンを続けてきた私の心臓は(物理的には)まったく正常で健康です。少々きつい山登りも平気です。そして(薬による)糖質制限であるSGLT2阻害薬やオメガ3にも、炎症をある程度抑える効果が実際にあると私は思います。さらにこのことは、がんの場合にも当てはまると私は考えます。がんの実態は巨大な慢性炎症だからです。ゆえに少しでもこの慢性炎症を抑えていく工夫が、がんを抑える上でとても重要に思います。

注:SGLT2阻害薬は薬剤なのでお医者さんによる管理が一番安全です。

 

by kotaro作          Thank you for reading