私の母親は乳がんだったのです。片側全摘と周辺のリンパ節切除をしました。もう30年近く前のことです。私もその当時は必死でした。再発がすごく怖かったけど、8年後に別の病気で他界するまで再発しなかったです。なので今も乳がんの人をみると、必死だったあの頃を思い出してきます。

 

アルペリシブ(PI3K阻害薬)は乳がんの分子標的薬です。日本ではまだ未承認ですが、米国などの64か国で承認されています。PIK3CA変異があることが条件ですが(別のサイトにはPIK3CA変異は乳がん患者の約20%とありましたが)以下のサイトには10,319人の早期乳がん患者中32%(3281人)がPIK3CA遺伝子変異型だったと書かれています。決して低い割合ではなさそうです。

 

 

日本でもすでにアルペリシブの治験が行われています。

主な参加条件は「ホルモン陽性」「HER2陰性」「PIK3CA変異が確認」「進行性乳がん」「フルベストラントの治療歴がない方」などです。あと「CDK4/6阻害剤治療歴がない方」とありますが、コホート2以外の群なら参加可能みたいです。

 

ただ、PI3K阻害薬(アルペリシブ)は、最初のうちは効いても、徐々に血液中にブドウ糖がだぶついてきて(高血糖)その反動で高インスリン血症になり、薬が効かなくなってしまうという弱点があります(インスリンはこの薬剤の効果を弱めます)ならばこの薬は、インスリンによらずブドウ糖を減らすケトン食と相性がよさそうです。マウスの実験ですが、ケトン食との併用で、実際にこの薬剤の有効性が高まったそうです。

 

 

ただ、ケトン食は実行するのが難しい場合もあるので、アルペリシブ+フルベストラント療法に、フォシーガ(SGLT2阻害薬)を組み合わせた治験が米国で行われているようです。フォシーガは薬による糖質制限(尿から糖を出す)で、食後血糖値はほとんど下げないけど、インスリンによらずに空腹時血糖値を下げる特徴があります。その時にケトン体も少し増えます。私の血糖値パターンとも少し似ています。

以下がその治験のあらましです。

 

一部要旨:高血糖は PI3K 阻害剤(アルペリシブ)の予想される結果です。動物モデルではアルペリシブによる治療で高血糖になり、その反動でインスリンが増加した(インスリンはアルペリシブの効果を弱める)(しかし)マウスにSGLT2阻害薬を投与すると、アルペリシブによる高血糖と高インスリン血症が減少した。重要なことは、腫瘍移植した組織の治療に対する反応が、インスリンレベルの低下と一致していた。(ヒトにおいても)フォシーガとの併用で、アルペリシブによる高血糖と高インスリン血症が解消できれば、アルペリシブの治療効果が大幅に改善できる可能性がある。

 

今回の私の記事は、乳がんで苦しむ方々に、少しでも明るい希望になってくれればよいなと思って一生懸命書きました。選択肢は少しでも多いほうが安心感が違うと思ったのです。フォシーガとの併用はともかく、アルペリシブはすでに日本でも治験が始まっているので、かなり現実的と思います。あと繰り返しますが、フォシーガ(SGLT2阻害薬)は薬剤なので、お医者さんによる慎重な使用が一番安全です。急激に血糖値が下がり過ぎると危ないです。