大坂なおみが東京五輪女子テニス3回戦で敗退した。

 相手はチェコのマルタケ・ボンドロウソバという選手で2019年の全仏オープンで決勝までいっている選手なのだが順当に考えれば大坂が負ける相手ではない。しかしこの日の大坂は試合開始から発汗も多く表情やリアクションからもいつもの大坂とは明らかに違いどこか虚ろさが全面から感じられる違和感があった。

 その違和感は第1セット開始時から私は感じていて今日は勝てないのでは?と思っていたが案の定ほとんど大坂らしさが出ることなくあっけなくストレート負けを喫したのである。試合をしていても「心ここにあらず」といった感じが見えたのだ。これは鬱を患っている人特有の感じでおそらくは大坂自身もそういった状態で試合をしていたと思うのである。


 考えてみれば可哀そうな気がするが何故大坂が鬱を患ってしまったのか?という疑問が大坂自身が鬱であることを表明したときから私の中にはあったのだ。そんな時、タイムリーにもネットフリックスで大坂なおみのドキュメントがOAされていたのでその番組を観たら「なぜ鬱を発症したのか?」の疑問が解けた気がしたのである。
 大坂なおみはご存じのように日本人の母とハイチ人の父親との間にできた日系のハーフ。1997年大阪で生まれ3才から父親の指導で姉とともにテニスを始める。才能はすぐに開花し11才の時にはヨネックスとスポンサー契約を結ぶほど将来性ある子供だった。14才でツアーデビューし16才にはプロ転向を果たしている。両親のもとで純粋培養されテニス一筋で才能に磨きをかけ実力はプロテニスプレーヤーの中でも群を抜いている。身長180cmという恵まれたフィジカルに技術が備わったのだから類稀なプレーヤーなのである。弱点は精神面でプレー中も自らがコントロールを失い自滅するパターンが殆ど、といった展開を過去何度も露呈している。

 つまり体力・技術は群を抜いているのに精神面が脆いため自滅してしまう、ということなのである。経験を積み上げてゆけばいつかは心・技・体が整い盤石な強さを持つプレーヤーになるのであろうがその過程で起きてしまった鬱の発症だ。現状を克服できるか?それとも鬱に負けて可惜の才能を失ってしまうのか?大坂なおみは今まさにその岐路に立っている、といえよう。

 

 鬱は精神の病と言われるが鬱を克服している人は数多くいることも事実。ドキュメントの中で大坂自身が語っている、「自分がどこにいるのかわからない・・・テニスが好きなのかどうかも・・・」と。この言葉こそが今の大坂自身なのだと思う。よりテニスに打ち込みテニスによって自身の立て直しを図るのか?大きな心の拠り所を見つけて立て直すのか?全く違った世界で新たな出発で再起を図るのか?テニス界で大きな存在であるだけにその去就は気になるところである。