今年のアカデミー賞受賞者が発表された。映画が大好きな私は毎年この賞の発表を楽しみにしている。昨年は韓国映画「パラサイト半地下の家族」が受賞したが、今年も遊牧民をテーマに描いた韓国映画「ノマドランド」が作品・監督・助演女優など多くの賞を獲得した。

 映画の世界では韓国の流れがまだ加速している。いずれの映画も奇をてらったものではなく普通の家族や生活を描いたものがアカデミーの評価を得ている。

 

 数年前、日本の短編映画とその女流監督や衣装・特殊メークといった部門では受賞実績はあるものの本賞に相当する作品・男女の主演に相当する賞を受賞したことは無く、映画製作に歴史ある日本としては寂しい限りである。

 近年の傾向としてCGや特撮、巨大スケールといったハリウッドらしい作品以外での受賞が続いているだけにとても残念である。主演男優賞には83歳になるアンソニー・ホプキンスが認知症の老人を描いた作品「ファーザー」で獲得したが、彼の実績と演技力からすればある意味順当な受賞という印象である。

 

 映画や演劇・芸能・伝統芸術をみるとその国の文化レベルがわかる、と言われるが失われた戦後70余年の時間によって日本はこれらの分野でも世界から大きな後れを取っているのではないか?と思う。歴史的時間を考えれば日本には2000年以上の歴史があるわけでその時間の中で育まれた文化の質は世界と比しても出色のものが数多くあり特に「繊細さ」という面では世界のどの民族よりも秀でたものをもった民族なのである。

 謙虚・誠実・忠誠心・礼儀・地道さなど人間としてのデリケートな資質は他民族の追随を許さないほど優れているものだと思う。特に自然を活かした物、例えば焼き物・織物・木工・石材・建築技法・塗り物・料理などでの発想力・技術・デザイン力などはいずれもが世界遺産級のものばかりである。

 日本人の一番の欠点は「表現力とアピール力・交渉力」の乏しさだろう。これは政治面でも同様のことが言えて今の外交内容をみれば一目瞭然だ。米・露・中・韓などとの外交に至っては目を覆いたくなるくらいのお粗末さだ。今のままで時間が推移してゆけばいずれ日本は諸外国に取り残されてゆきかつて敷いていた鎖国のような状態にならないとも限らないのではないか?といった思いすら頭をかすめる。