『スサノオと瀬織津姫を巡る旅』。
1話目,『歴史の闇に葬られた女神』
2話目,『新たなる伝説の始まり』
3話目,『瀬織津姫が封印された時』
4話目,『瀬織津姫が愛した神』
5話目,『ニギハヤヒとは何者か?』
6話目,『瀬織津姫…が…現れた…?』
7話目,『瀬織津姫信仰の始まり』
8話目,『イワナガ姫の登場と新たなる謎』
9話目,『神話の裏側を見るということ』
10話目,『再開の音色が響く時』
11話目,『なぜ瀬織津姫を巡るのか?』
※イラスト from 瑠璃の星☆ミさん
旅の再開の地、
天河大辨財天社を経て、
東京に戻った僕は、
『瀬織津姫とニギハヤヒの正体を知る』。
そのためには旅に出たくても、
改めて知らなければ始まらないと思い、
一人、色々と調べ直していた。
封印が解けることはない』。
スサノオさんのその言葉を思い返し、
瀬織津姫とニギハヤヒの、
起源について調べるべく、
改めて古事記や色んな神話を、
読み返しているものの…。
…いまいち掴めない。
まず瀬織津姫という名は古事記の中には、
表記がなく、
今この現代では、
瀬織津姫は大祓詞(神道の祭祀に用いられる祝詞)の中に登場する、
『祓い(浄化)の神』として、
出雲大社、大神神社を始め、
『祓戸四神』の一柱として祀られている。
古事記の中では、
黄泉の国から逃げかえった、
イザナギさんが、
自身についた黄泉の穢れを祓うために、
河で禊をした時に現れた、
『大禍津日神(オオマガツヒノカミ)が瀬織津姫ではないか』と言われているが、
もちろん『大禍津日神』とは、
その『禍(マガ)=災厄』という漢字の通り、
災い、穢れの神とされている。
…が、
それは正直、
これだけ時を越えて、
愛され続けている、
『瀬織津姫』という存在と照らし合わせた時に、
いまいちピンとこない。
そもそも『祓いの神』としての祀られ方自体が、
後世で瀬織津姫を封印するために作った、
新しいレッテルであるという話もある。
しかし果たして、
この『ピンとこない』という感覚を、
信じていいものかどうか。
それも一つの疑問だったのだが、
それに対しては…?
そもそも古代から、
神というものは『知る』ものではなく、
『感じる』ものや。
それぞれが『感じた』ものを、
神として祀ったり、
後に絵に落とし込んだりしたことが、
始まりやねんから、
頭で知ろうとせずに、
心で『感じる』癖をつけろ」
…とのことだったので、
ここは一度、
自分の感覚を信じてみようと思う。
そして次に、
ニギハヤヒという神について。
古事記での表記をざっと書くと、
初代神武天皇が東征(日向の地を発ち、大和を征服して橿原宮で即位した出来事)において、
宿敵ナガスネヒコとの最終決戦に勝った後に、
天から持ってきた宝物を神武天皇に捧げ、
その軍門に下った神として登場する。
…しかしこれだけでは、
ニギハヤヒさんが一体どういう神さまか、
何もわからない…。
そこから古事記の他にも、
ニギハヤヒについて書かれているという、
『日本書紀』、『先代旧事本紀』、『新撰姓氏録』、
『天神本紀』、『上記』、『播磨国風土記』、『ホツマツタエ』などなどの該当箇所を…、
ザッと読んだりしてみたものの…、
そこでは、
ニギハヤヒさんとは、
オオクニヌシさんの子であるという表記があったり、
スサノオさんの子であるという表記があったり、
天孫ニニギさんの兄であり、
ニニギさんより先にアマテラスさんの孫として、
『天孫降臨』したという表記があったり…。
…もうめちゃくちゃ…。
…そうこうしていくうちに…?
あ「…Zzz」
ス「バシンッ!!(頭を叩く)
起きろ!!ハゲ頭っ!!!!」
も~…だって全然掴めないんですもん~…。
瀬織津姫さんの正体も~…、
ニギハヤヒさんの正体も~…。
どの神話も鵜呑みにして良いのか悪いのか、
分かんないし~…。
まだまだ全然知識がないから、
調べていると言っても、
ほとんどピンと来ると言えば来るし、
来ないと言えば来ないし~…。
どんどん自分の感覚を信じて良いものやら、
悪いものやらすらも、
分からなくなってくるし…ブツブツ…」
ス「ブツブツ言うな、うすらハゲが。
そんなもん当たり前やろ。
家で本やパソコンいじくってるだけで、
『感じる』ことなんか出来るか。
旅やねんから外に出ろ、外に」
…。
……。
………。
…………。
スサノオさんにそう言われて、
とりあえず外に出たものの、
どこに行けばいいのか…?
そう思った僕が、
向かったのは、
なぜか湯島天神。
『学問の神』であるミッチ―こと、
Teamスサノオの一員、菅原道真さんがいる。
ミッチ―に相談をすることにした。
(※スサノオさんは知っていても、教えてくれないので)
あ「実はこうこうこうで、
あぁ、あぁ、あぁで、
行き詰まってまして…」
道「ふむふむ…。
まぁこれで分かってしまう私、私、私も、
どうかと思いますが…。
荒川さんには、
妻 宣来子との魂を繋いで頂いた恩がある。
そんな荒川さんに、
私から今お答えできるのは、
ズバリ一つでしょう!!」
道「荒川さんはまだ、
神話を神話として見過ぎです。
一度人間側から、
神話を見る必要があります」
ス「だから、前から言うとるやろがぃ。
『封印された者(瀬織津姫)がいるということは、封印したものがいるということ』。
『古事記を始めこの世に神話があるということは、それを作った「人間」がいて、
そこには、何かしらその人間の意図が込められている可能性があるということ』、
それを調べろって」
あ「いや!ちゃんとそれも意識して、
読んでますって!!」
ス「じゃあ聞いたるわ。
古事記は何年に作られた?」
あ「完成は712年!
673年 天武天皇の時代から始まり、
持統天皇、文武天皇を経て、
3代先の元明天皇の時代にかけて作られた!」
ス「何の意図で作られた?」
あ「戦争によって焼失した『天皇記』や『国記』に代わる国史の編纂と、
日本中に散らばる神話を統一するため!!(ドヤッ)」
ス&道「………」
あ「エッヘン(鼻高々)」
ス「お前…、
そこまで知ってて、
ホンマに分かってないの…?」
あ「何が?」
道「まぁまぁ(笑)
このバカ正直さが、
スサノオさんが荒川さんを気に入った、
理由の一つなんでしょうし…(笑)」
あ「誰が『バカ正直』や。
って、何よ?さっきから一体?
コソコソ話して。あんたらは女子か」
ス「…伝えられていることを、
そのまんま信じるバカが、どこにおるかってことや!!」
あ「ビクゥッ!?!?
い、いや!だって古事記の内容自体は、
素晴らしいと感じてるんだもん!!
実際にその中の神さまたちにも会って来たし!!
実際いたしっ!!」
ス「『だもん』ちゃうわ!大ドアホッ!!
ほんまこのアホだけは、
感性が鋭いんか鈍いんか、分かれへん。
ええか、俺と道真が言ってる、
『人間の意図を知れ』というのは、
神話の『内容』のことじゃない。
その前の、
そもそもの『古事記成立の背景と、その意図を知れ』ということや」
あ「だから知っとるがな」
ス「それを鵜呑みにするなと言うてんねん、ドアホっ!!」
あ「ど、どういうことよ!?(汗)」
道「古事記や日本書紀を始めとした神話の中には、
古代のヤマト王権との権力争いに敗れた豪族や、
制圧された部族たち、またそれらが信奉していた神々が、
破れた神や悪神として登場させられるという、
実際の裏の歴史が隠されているということです」
あ「それは今までの、積み重ねの中で知っとる。
タケミカヅチさんに敗れた、
タケミナカタさんとか、
アマツミカボシ(星の神)さんの話とかでしょ?
でもそれこそそれは、
神話の中の一部分の話じゃないですか。
壮大な物語なんだから、
そりゃ一部分は、
そんなこともあるでしょうよ」
ス「一部分ではなく、
そもそも古事記全体が、
そういう意図を持って、
作られた書物やとしたらどうする?」
あ「(ゴクリ…)
ど、どういうこと…?」
道「まぁ要は古事記編纂の段階で、
荒川さんがさっき言っていたような表の意図ではなく、
そもそも『ある裏の意図を作り上げるため』に作られたものが、
古事記だったらとしたら?という話です。
…そのために当時の、
古事記編纂時の歴史の背景をもっと深く、
知りましょうということです」
ス「そういう意味で言うと、
お前全然分かってないやろ?」
あ「………は、はい………(小声)」
ス「…ったく…。
ヒントを与えてやっても、
まともに受け取れやがれへん。
色んな神話を読んだとか偉そうに言いながら、
どうせ読んだだけやねん。
アホ過ぎて腹立つわ、こいつ」
道「まぁまぁ…(笑)
一生懸命なのは確かですから…(笑)」
あ「ぼ、僕はどこから調べていけばいいんでしょう…?」
ス「自分で考えろ、ドアホ」
道「まぁまぁ…(笑)
とりあえず古事記編纂に、
大きく関わった時代の天皇と、
その時の歴史的背景について、
調べてみてください。
そこから見えてくることがあるはずですから」
あ「…っと、ということは、
天武天皇とか持統天皇ぐらいから、
ということですよね…?」
…。
……。
………。
…………。
『瀬織津姫』と『ニギハヤヒ』という、
謎多き神々を追う旅は、
近付こうにも、
まだまだ遠くて。
しかし、
『古事記編纂に、
大きく関わった時代の天皇と、
その時の歴史的背景を知る』、
という、
新たな発見を得て、
手探りでも、
次の物語へと進んでいく。
※イラスト from 瑠璃の星☆ミさん